政治家も芸能人も、会見を見え見えの“嘘”で言い逃れるワケ

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

人間は嘘をつく生物だとはいえ……

 現在は今井絵理子(33)に山尾志桜里(43)の両議員、そして斉藤由貴(51)。少し前なら乙武洋匡氏(41)やベッキー(33)といった面々になるだろう。いずれも不倫関係を巡る報道の釈明で苦し紛れの弁明に終始し、かえって世論の怒りを買った人々だ。言い逃れなど不可能だと誰でも分かっているのに、渦中のご本人は、いけしゃあしゃあと虚偽を並べ立てる。考えてみれば、実に不思議な精神構造だ。

 ***

 彼らの言い分を確認しておこう。「一線を越えていない」(今井)、「男女の関係はありません」(山尾)、「不倫関係ではございません」(斉藤)、「まあ、私がしでかしたこと自体は、妻はずっと前から知っていたことなので」(乙武)、「お付き合いということはなく、友人関係であることは間違いありません」(ベッキー)……こんな具合だ。

 今となっては、「よくこれで世論が納得してくれると考えたな」と首を傾げたくなるほどだが、精神科医の片田珠美氏は「そもそも人間は嘘をつく生物ですが、窮地に立たされると、ますますその傾向が強くなります」と指摘する。

 片田氏が引用するのが、同じ精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』(中公文庫・鈴木晶訳)だ。この名著でロスは「死の受容プロセス(5段階プロセス)」を示した。例えば医師に「あなたはガンで余命○カ月です」と告げられた時、人間はどのような心理的葛藤を経るのか、そのプロセスを解明したわけだ。

 第1段階は「否認と孤立」となる。自分がガンで死ぬということを、人間は認められない。「まさか、そんなはずがない」と叫ぶ。医師の誤診かもしれないとも思う。民間療法なら治ると希望を見出す。だが、自分が間違っていることも、心の奥底では知っている。だから周囲とは顔を合わせたくない。孤立を選ぶ。

 第2段階は「怒り」だ。自分の死を受け入れられず、「俺が何か悪いことでもしたのか!」、「私より、死ななければならない悪人なんて、いくらでもいるでしょ!」と怒りに支配されている状態だ。身近な人間に「私は死んで、何もなくなってしまうのに、あなたは生きている」と嫌みを言うケースもある。

 第3段階は「取引」。神仏にすがり、せめて死を遅らせてほしいと祈る。全財産を寄附しようとする者もいる。日本人なら「断ち物」が多い。「もう二度と酒は呑みませんから、ガンを治して下さい」と祈願するわけだ。

 第4段階は「抑鬱」だ。全ての希望が打ち砕かれ、初めて死を直視した状態と言える。文字通り「神も仏もないのか」という絶望に支配される。これらの段階を通過して初めて、第5段階としての「受容」に到達する。自分の死を、平穏な気持ちで、あるがままに受け入れる。

「ロスは第5段階に辿り着くことは難しいと指摘しています。ことほどさように、人間とは、なかなか観念しません。しかも不倫問題の場合、どれだけ報道が正確で説得力があっても、決定的な瞬間が提示されることは稀です。斉藤由貴さんが代表例ですが、不倫相手と手を繋いでいるという、真実性が高そうに見える写真が掲載されても、ベッドの様子を撮影することは不可能だという共通認識もあります。だから斉藤さんとしては否定する方を選んでしまう。『本当の証拠はないだろう』という一種の居直りですね。ところが極めて近しい関係と思われる周辺からキス写真が暴露され、白旗を上げざるを得なくなったわけです」(同・片田氏)

次ページ:根底に潜むのは現実逃避

前へ 1 2 3 次へ

[1/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。