小池百合子新都知事の右腕 除名覚悟の「若狭勝」氏が都議会のウソを暴く

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■元東京地検特捜部検事

 都知事選で圧勝した小池百合子氏の選挙戦の最中、彼女の後ろに立つ姿がよくテレビに映っていたのが、自民党の若狭勝衆議院議員。今回は、党から「小池を応援したら除名」といった通達があったにもかかわらず、除名覚悟で小池氏の応援に回ったことから、当選の陰の立役者の一人とも言われている。都知事選の後、彼は「できれば自民党に籍をおいていたい」とフジテレビの情報番組「とくダネ!」で心情を吐露しているが、どういう処分が下されるかはまだ不透明なところだ。

 その若狭氏、かつて東京地検特捜部検事だったのは有名な話。数多くの取り調べにかかわってきた彼は、3年前、『嘘の見抜き方』という本を出版している。同書は「人が嘘をつく4つの理由」「嘘を見抜くための心得」「嘘つきのつかうセリフ」等々、過去の知見を活かした独自の「ウソ」に関する考察、見抜き方が盛り込まれた1冊。
 
 今回はその中から「人が嘘をつく4つの理由」についての解説を紹介してみよう(以下、引用は同書より)。

■嘘をつく理由は4パターン

小池百合子氏

 検事経験を通じて、たくさんの嘘に接してきた若狭氏は、嘘には「自覚的につく嘘」と「無自覚につく嘘」があるという。

 そのうち前者はさらに4つのパターンにわかれる。

(1)自分を守ろうとする「防御の嘘」

(2)自分を大きく見せようとする「背伸びの嘘」

(3)他人を陥れるための「欺瞞の嘘」

(4)他人を守るための「擁護の嘘」

(1)は動物の持つ「防御本能」に近いものだ。

「ただし人間が恐れているもの、逃れたいものは他の動物よりはるかに複雑です。処罰されたくない、仕事を失いたくない、信用や地位を落としたくない、お金を失いたくない、家族を失いたくない、怒られたくない……。

 自己防衛として、真実を覆い隠し、隠蔽し、ごまかすのはある意味必然なのです」

 わかりやすい例としては、若い女性と浮気をしたという嫌疑がかけられた男性が、身におぼえがあったとしても、つい、

「やっていない!」

「事実無根だ!」

「誰かが俺を陥れようとしている!」

 などと言ってしまうのは、まさにこの「防御の嘘」と言えるだろう。

■意外すぎる殺害動機

(2)は「虚栄の嘘」と言い換えてもいいだろう。

「キレイに見せたい、能力を示したい、注目されたい、社会的地位を得たい……。そんな『自分を少しでもよく見せたい』という見栄からついてしまう嘘のことです。

 この手の嘘は社会にはびこっています。

 この嘘と向き合う上で重要なのは『プライド』と『恥』です。この『背伸び』の嘘は、プライドと恥が動機となって生み出されることが多い。プライドが高い人はプライドを守るために嘘をつき、恥を怖れる人はそれが明るみにでないように嘘をつきます」

 若狭氏自身が経験した例としては、こんなものがあったという。ラブホテルで男性が交際相手を殺した事件。被疑者は殺害事実こそ認めるものの、動機がなかなか分からなかった。

「真実は意外なものでした。実は彼は先天性梅毒で、他人に感染させてしまうことを恐れ、人との接触を極力避ける生活を続けていました。

 そんな彼にも中年になってようやく交際相手ができました。それでも相手に病気のことは打ち明けられず、性行為では感染させてしまうと考え、一緒にお風呂に入るといった感染の可能性のない行為を続けていました。

 ところがあるとき、お風呂の中で、彼女がふと『うつる』という言葉を発したというのです。

 必死で病気を隠し、人一倍その言葉になっていた彼は、その瞬間全てバレたと思ったそうです。この関係はもう終わりだ、病気も世間にバレてしまう――頭に血が上った彼は、病気を隠し通し、自らのプライドを維持し続けるため、彼女のことを思わず殺してしまったのです」

■利権追及チーム

(3)他人を陥れるための「欺瞞の嘘」は、詐欺などが典型なのでわかりやすいだろう。若狭氏の指摘で興味深いのは、犯罪者の悪質性という点に注目した場合、実は殺人犯や暴行犯よりも詐欺犯のほうが「心が壊れている」こともあるという。

「殺人犯や暴行犯は意外と取り調べにも素直に応じ、真実を話し、反省を見せる傾向にありますが、詐欺犯の供述というのは徹頭徹尾嘘だらけ。

 こちらが何を言っても動じず、罪悪感を感じている人が少ないのです」

(4)他人を守るための「擁護の嘘」は、政界、経済界絡みの事件ではお馴染みだ。

 秘書やヒラ社員がボスを守るという構図は常にある。舛添前都知事にそういう人が出てこなかったことが不思議なくらいである。

 若狭氏は、嘘を見抜くにあたっては、それがどのパターンの嘘なのかを見極める必要がある、と述べている。ただし、綺麗に4つにわかれるのではなく、動機が混在していることも少なくないのだそうだ。同書ではそれらの嘘を見抜く実践的なテクニックも披露されている。

 小池都知事は就任会見で、今後、都政の「利権追及チーム」に若狭氏の起用を検討している、と述べている。国会議員が都の調査チームに参加するとなると、かなり異例のケースとも言えるが、それだけ彼の手腕を評価しているということかもしれない。

 都議会や五輪組織員会には様々な「闇」が囁かれている。何らかの利権が隠されているとすれば、そこには誰か嘘をつく人間がいるはずだ。

 嘘を見抜くエキスパートの腕に期待する都民も多いのではないか。

デイリー新潮編集部

2016年8月4日掲載

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