オウム麻原の主治医「中川智正」が綴った「金正男」殺害の分析レター

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発表前に

 その分析レターの中身を見てみると、〈彼ら(北朝鮮)は、この殺人を病気による突然死に偽装しようとしたのだと思います。(略)3件のオウムVX事件では、犯罪が起きたと考えた医師はいなかった。(略)最初の診断は脳卒中、心臓発作、農薬中毒でした〉〈VXは、金氏の皮膚だけではなく、より容易かつ急速に浸透する目を通じて吸収されたに違いありません。その結果、(略)飛行機搭乗より前に死亡し、最も重要な証拠である遺体がマレーシアに残りました〉。

 さらに、〈犯人の女性達は死亡する可能性が高かったと思います。(略)我々がVXを使用した時は、実行犯は針なしの注射器から数滴のVXを飛ばしました。マレーシアVX事件では女性達はVXを手に取り、金氏の顔に塗りつけました。彼女達が手袋を着用していようと他の部分は保護されていませんので、一種の自爆攻撃と言えます〉などと論じている。

 アンソニー・トゥー名誉教授に聞くと、

「2月13日に金正男暗殺事件が起こったときも、中川さんは弁護士を通じてメールを送ってきました。そして、マレーシア当局によって、VXガスが殺害に使用されたと発表されるよりも前にVXガスに言及していたのです」

 その後、4月に入り、11回目となる面会をしてきたという。

「そこで、中川さんから、VXガスについて何を書けばみなの役に立つだろうかと相談されました。私は人間にどのような作用をもたらすかを書いたらいいのではとアドバイスした。歴史上、VXガスで人を殺害したことがあったのはオウムだけ。しかも、中川さんは製造過程でVXガスに触れたオウム信者の解毒処理も行っていますし、自らも中毒症状を起こしたことがあり、実体験に基づいた証言をすることができるのです」(同)

 死して残すは、凶悪犯罪の体験談か。

週刊新潮 2017年9月7日号掲載

ワイド特集「天つたふ日ぞ 楽しからずや」

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