江戸の「かわいい」選手権ダークホースはこの絵師だ 長沢芦雪のリアルかわいい虎

アート

 一般に江戸時代の絵というと、浮世絵を連想する人が多い。

 そこで描かれている風景や美人はもちろん趣があり、また春画には独特の魅力があるのはたしかだが、「かわいい」かといえばそうでもない。

 近年、ブームとなった伊藤若冲の動物画も、そのカラフルな色使いや大胆な構図には目を奪われるだろうが、「かわいさ」の点では物足りないかもしれない。

 この時代の美術に多少通じている方ならば、江戸の「かわいい」絵として、禅画を推すことだろう。筆で描かれた禅画は、現在のマンガに通じるものがあり、実にイラストとして楽しいものがある。

 しかし、ここに来て俄かにブームの兆しを見せているのが、長沢芦雪だ。

 1754年に丹波藩士の子として生れた芦雪は、円山応挙門下の絵師。超絶技巧の写実力を示した作品から山水画まで千変万化の作風を持つ。のこされた作品の中には、わずか1寸(約3センチ)四方の大きさに500人もの羅漢を描きこんだというトンデモないものまである。

 その芦雪の作品と生涯を紹介した『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』の表紙に使用されている「水呑虎図」は、「超絶技巧の写実力」と「かわいい」を両立させた代表作の一つ。

 よく見ると、虎の毛の一本一本、舌の斑点までもが詳細に描かれているのがわかるだろう。

 この作品は1782年、芦雪がまだ20代の頃の作品と見られている。写実的でありながらも、ペロリと舌を出した表情からは虎の獰猛さよりも愛嬌を感じる方が多いのではないか。

 芦雪は1799年、大坂で死亡したとされている。死因には毒殺説まであるが、たしかなところはわかっていない。

 近年までさほど有名ではなかったが、若冲ブームなどもあって、「奇想の絵師」として、このところにわかに注目が高まっており、前述の『かわいい こわい~』が7月に刊行されたのに続き、10月6日からは愛知県美術館で「長沢芦雪展」も開催の予定。

 一部では「若冲の次にブームになるのは芦雪」とも言われている。水を呑む虎を「かわいい」と思った方は、注目してみてはいかがだろうか。

長沢芦雪展 京(みやこ)のエンターテイナー
2017年10月6日(金)-11月19日(日)
愛知県美術館
http://www.chunichi.co.jp/event/rosetsu/

デイリー新潮編集部

2017年8月28日