沢口靖子は音痴、斉藤由貴は補欠…伝説のマネが明かす「東宝シンデレラ」秘話
「自分も歌をやりたい」
思い返せば、東宝芸能の新人女優がNHKの朝ドラのヒロインに選ばれるようになったのは沢口がきっかけになった面がある。事実、翌年の朝ドラ「はね駒」のヒロインは斉藤に決まり、さらに第4回の田中美里(審査員特別賞)も「あぐり」(97年)のヒロインです。
第1回のグランプリに輝き、常に一歩先をリードする沢口。しかし、斉藤のことを相当に意識していたと思います。
斉藤がアイドルとして人気が出ていたころ、沢口が「自分も歌をやりたい」と言い出したことがありました。デビュー3年目のことです。実際、彼女は初出演の「刑事物語3 潮騒の詩」では挿入歌を歌っている。当時、プロデューサーだった私は、日本青年館でのコンサートを担当し、振付師にレッスンを依頼するのも私の担当でした。レオタードの店(チャコット)が渋谷の公園通りにあり、沢口と一緒に出かけたものですが、人気の清純派女優と、四十路の冴えないオジサンがうろうろしている様子はちょっと不思議な光景でしたね。
歌手にも食指を動かした沢口ですが、「天は二物を与えず」というのでしょう。彼女は声帯が弱いところがあるんです。朝ドラはヒット、CMの契約も決まり、人気はうなぎ上りでしたが、正直いってライブは失敗だった。赤字にはならなかったけどコンサートの入りは6割ぐらい。しかし、その後の役者人生を考えると沢口にとっては、この挫折が良かった。
***
(下)へつづく
[5/5ページ]