黒田「日銀」に新審議委員 2人の身上書

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 森友、加計学園の問題に始まり、若手議員の相次ぐ不祥事、果ては稲田朋美議員の防衛相辞任。各社の世論調査で安倍政権の支持率は20%台まで急落し、足元が揺らぎ始めている。その一方、日本銀行では黒田東彦総裁(72)を支えるために新たな2人の審議委員を起用して、盤石な体制を築いているのだという。

 日銀の最高意思決定機関である政策委員会は、黒田総裁を筆頭に副総裁2人、審議委員6人の計9人で構成されている。全国紙の日銀担当記者の解説では、

「日銀は、長引くデフレを解消するために“リフレ政策”と呼ばれる大規模な金融緩和を実施している。メンバー9人の内訳はリフレ派5人、体制寄りの中間派2人、反対派2人。その反対派2人が任期満了で退任し、7月24日付で新しい審議委員が就任しました。これで審議委員は、すべて安倍政権下で任命されたことになります」

 新たな審議委員は、三菱東京UFJ銀行の元副頭取・鈴木人司(ひとし)氏(63)と、元三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員でエコノミストの片岡剛士氏(44)の2人。ちなみに、審議委員の任期は5年だ。日銀OBによれば、

「これまで審議委員のメンバーには、必ずメガバンク出身者が名を連ねていました。それが昨年6月、官邸の強い意向で新生銀行の政井貴子さんが起用されたため、メガバンクは“指定席”を失ったのです。逆に、日銀はメガバンクの“生の情報”を得られずに苦慮していたので、鈴木さんの起用は両者にとって“ウィン・ウィン”だと思います」

 鈴木氏は慶応大学経済学部卒で、旧三菱銀行出身。市場畑が長く、日銀や財務省に豊富な人脈を持つ理論家と目されている。

「銀行の収益を圧迫するマイナス金利政策について、鈴木さんは、“どんな良薬でも必ず副作用はある”と一定の理解を示している。決して、業界の代弁者にはならないはずです」(同)

副総裁の推薦?

 実務を熟知し、政策も理解する鈴木氏。日銀からの評価も高く、ここ数年は審議委員候補に必ず名前が挙がっていたが、一方の史上最年少で登用された片岡氏は、どんな人物か。

「片岡さんは鈴木さんと同じく慶応大学出身で、スタートは旧三和総合研究所。参院や会計検査院にも籍を置いた経歴を持ち、“リフレ原理主義者”として知られるエコノミストです。“日銀のリフレ政策は、まだ不十分。更なる金融緩和が必要だ”との発言が話題になりました」(先の記者)

 だが、片岡氏を強く推したのは、日銀の岩田規久男副総裁だという。片岡氏をよく知るエコノミストがいうには、

「片岡さんは、リフレ派の牙城と呼ばれる『昭和恐慌研究会』にも所属している。彼は会の主宰者である岩田副総裁から目をかけられて、仲間からは“岩田さんの秘書”と呼ばれています」

 で、この時期に“安倍支持派”で固めたのはなぜか。

「昨年2月に導入した“マイナス金利政策”は賛成5、反対4という僅差で採用されました。そんなことが再び起きず、日銀の最重要課題で、6度も先延ばししている物価上昇率2%を達成するために、審議委員をリフレ派一色にしたわけです。目標達成のためとはいえ、少しやり過ぎではないでしょうか」(同)

 続投説も囁かれるが、黒田総裁の任期満了は来年4月8日。トップが去っても、彼らは2022年まで審議委員を務めなければならないのだ。

週刊新潮 2017年8月10日号掲載

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