「死の睡眠導入剤」女准看護師がもらした呆れた動機

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「仲が良かった」

 だが、その供述について先の施設長は首を傾げる。

「仕事の重要性に変わりはなく、むしろ被害を受けた同僚たちとは仲が良かった。交通事故で大ケガをした60代の女性事務員は、昨年6月に異動してきましたが、波田野さんの方から“この人どうですか”と紹介されたことがきっかけですし」

 周囲からの信頼も厚かったと施設長は話を継ぐ。

「当医療法人には10年以上勤務しており、この施設で准看護師の資格を持つのは彼女だけ。午前8時半から午後5時半までの勤務を週5日、無断欠勤もありません。最年長のスタッフとして面倒見も良かった。入所者の健康相談や体調管理を担う主力メンバーでした」

 そんな彼女は、市内の一軒家で夫と2人暮らし。毎日、夫に車で送迎されていた。

 さる近隣住民によれば、

「波田野さんは約6年前に乳がんを患った後、自宅で脊椎損傷の怪我をしたそうです。旦那の話では、仕事にも疲れて休日は一日中寝ているのに、職場からよく電話がかかってきて薬の処方を聞かれると嘆いていた。ストレスが溜っていたのでは」

 そう慮(おもんぱか)るが、その矛先を同僚に向けていい筈がない。

 精神科医の片田珠美氏はこんな意見だ。

「容疑者は羨望が強く、他人の幸福が我慢できない怒りを溜め込むタイプの人物です。周囲の評判が良い分、他者への不満を内に溜め込み陰湿な形でしか出せない。交通事故を起こすことが分かっていながら薬を入れたのなら、未必の故意となる。かなり陰湿な犯罪です」

 命を預かる立場にいた彼女の「転身」は、あまりに身勝手と言うほかない。

週刊新潮 2017年7月27日号掲載

ワイド特集「華麗なる転身譜」より

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