「自衛隊の活動は安全な後方地域」という詭弁 実情と乖離する「9条」 

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■投石と棍棒

 また、同地域で実際に車両を操縦した輸送科職種の陸曹Cは、

「国連の車両が石を投げられたり、停車中に棍棒で叩かれることもあった」

 と話す。やはり狙われたのは白人系部隊の車両だというが、PKOに参加する各国部隊の車両は一律「白色にUNマークを入れた仕様」に塗装されているので、

「日本隊の車両がいつ(白人系部隊の車両と)勘違いされて襲われてもおかしくない状況だった」

 当該部隊で隊長を務めた幹部自衛官Dは、

「『安全な後方地域』とはいえ襲撃は予想していた。このため、当初は輸送科職種の隊員(いわゆる戦闘行動が不得手)中心に編成されていた部隊を、普通科(いわゆる歩兵で、近接戦闘を主に行う職種)主体の編成に変えてもらった」

 という。不意に襲撃された場合の“対敵行動”においては普通科の右に出る職種はないからだ。それだけ“危険”を見積もっていたのだろう。後方支援活動は政治的には「安全」と強弁されてきたが、これはまさに政治の不作為を誤魔化すための詭弁ではないのか。

 Dは続ける。

「明確に自分が狙われた場合の正当防衛や緊急避難でしか武器が使用できない。例えば、明らかに任務を妨害しようとするテロリストやゲリラが、隊列を組んで輸送任務を行う部隊の行動を危険な手段で妨害しようとしているところを確認したとしても、『任務遂行のための武器使用』は許可されておらず、とりあえず隊員または車両などの装備品が被害を受けるまで待つしかなかった。まして同じ後方支援を担当する他国の部隊と行動している時はさらにややこしかった。彼らがゲリラに襲撃されても、日本隊は傍観するしかない……」

 と言って、その先の言葉を飲み込んだ。私が、

「一緒に仕事をしている同僚や友人が危険に晒されても手助けもできない。『余計なこと』をしたら『憲法違反』だと騒がれる。“日本の常識はまさに世界の非常識だ”と言いたいのだろう」

 そう水を向けると、Dはニヤリと笑った。

 一昨年の安保法制整備によって、南スーダンPKOから、「駆け付け警護」が可能になった。これでこの問題も多少は改善されるはずだが、実際、現場で堂々運用できるようになるかどうかは未知数である。

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