永田町きっての「鉄オタ」石破茂氏の語る豪華寝台列車の潜在力

社会 2017年5月18日掲載

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■鉄道オタク議員といえば

その鉄道愛の深さは有名で、鉄道関連のニュースではコメントを求められることも多い石破氏

 マンガ「テツぼん」(画・永松潔、原作・高橋遠州)をご存知だろうか。代議士である父親が急逝したことで地盤を継いで2世議員となった、鉄道オタクの青年代議士・仙露鉄男の活躍を描いた人気マンガだ。

 若くてボンヤリした感じの仙露議員とルックスはかなり異なるものの、「父親のあとを継いで議員となった鉄道オタク」という条件で探した場合、真っ先に名前が挙がるのが石破茂初代地方創生担当大臣だろう。その鉄道愛の深さは有名で、鉄道関連のニュースではコメントを求められることも多い。

 特に石破氏が好きなのが夜行列車。防衛庁長官在任中は、危機管理上の問題から夜行列車に乗ることを禁じられていたことが大きなストレスだったと、後に述懐しているほどである。ある意味で、リアル「テツぼん」だと言えよう。

 そんな鉄道マニアたちの枠を超えた、最近の鉄道関連の話題といえば、JR東日本の豪華寝台列車「四季島」の運行開始だろう。目をみはるばかりの豪華な客室と、それ以上に目をみはりたくなる価格設定は、全メディアが取り上げるほどのニュースとなった。

 もっとも、こうしたニュースでは「豪華な列車が日光などの有名観光地を回る」という単純な図式で報じることがほとんどだった。

地方の魅力を伝える時に、有機的に機能することを期待されているのが、鉄道やバスといった交通事業ではないかと思います、と石破氏

■「ななつ星」が町を活性化させた

 しかし、豪華列車の持つ潜在力はそんなものではない、と石破氏は指摘する。

 こうした豪華寝台列車のブームの先駆けとなったJR九州の「ななつ星in九州」。この「ななつ星」に、石破氏はテレビ番組の企画でJR九州会長の唐池恒二氏、同列車のデザイナーの水戸岡鋭治氏と一緒に乗る機会があったという。石破氏が新著『日本列島創生論』で、その時の経験を熱く語っている部分を抜粋して、ご紹介してみよう。

「残念ながら、テレビ取材の一環で数時間のみでしたが、乗車中は鉄道ファンとして至福の時間を過ごせました。その乗車中、3人で焼酎を飲みながら、あれこれ話したものですが、その時、唐池さんが、しみじみと仰っていた言葉が非常に印象的でした。

『石破さん、日本語が通じて、日本の習慣が通じる素晴らしいところがいっぱいあるのに、なぜそれをみんな売りにしないんでしょうね』

 本当にその通りだと思います。

 JR九州のリゾートトレインは、水戸岡さんの方針もあって、がんばっている土地にしか列車を止めないようにしているそうです。

 がんばって町おこしをしている、がんばって特産品を売ろうとしている、がんばって人を呼ぼうとしている、そういうところに列車を止めるというのです。

 決まりきった観光地以外にも、素晴らしい土地はいくらでもあります。その中で、前向きに努力しているまちに『ななつ星』が止まる。そのおかげ、観光が活性化する。実際にそういうことが起きているのです。

 日本人を取り込むには、『アジアや欧米、アフリカもいいけれど、気楽に行けるところ、身近なところでこんなにいいところが日本にはありますよ』ということをもっとアピールしなければなりません。

 そして、別に大げさなことを言わなくても、本当に素晴らしいところは多くあるのです。ただ、それを私たち日本人が知らないだけです。

 たとえば西日本の人間は、東北、北陸のことを知らない。逆に東日本の人は今でも島根と鳥取の区別がつかない、というのがふつうでしょう。

 そういう人たちにこれまでよく知らなかった地方の魅力を伝える時に、有機的に機能することを期待されているのが、鉄道やバスといった交通事業ではないかと思います。

『ななつ星』はその模範生のような存在です」

 そもそも豪華寝台列車に乗るような客の多くは、普通の観光地には大抵行った経験があるような人ばかりだろう。それだけに、有名な場所ではないところに立ち寄るほうが、新鮮で喜ばれる可能性は十分あるのではないだろうか。

デイリー新潮編集部