STAP騒動で一躍有名、若山教授の画期的“精子&卵子”研究

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山梨大学若山研究室プレスリリースより

 とあるマウスが注目を集めている。といっても、相次いで出現する大口の深海鮫でも、浦安に生息するアイツでもない。

 国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で9カ月間、フリーズドライ状態で保存されていた精子から、正常な繁殖能力を持つマウス73匹が誕生したのだ。

 科学部記者が解説する。

「宇宙空間では強い放射線が常に飛び交っているので、当然、精子のDNAもダメージを受けます。今回の実験で使われた精子も損傷を受けていたのですが、地球に持ち帰って受精させ、生まれたマウスを調べたところ、なんの問題もなかった」

 その理由はというと、

「卵子が本来持っているDNAの修復力でカバーされたのです。宇宙での哺乳類の生殖活動に関する、世界で初めての報告です」(同)

 この研究成果を米科学アカデミー紀要に発表したのは、若山照彦山梨大学教授。STAP細胞問題で一躍“有名”になった御仁である。

 科学ジャーナリストの緑慎也氏が言う。

「あの件で変な印象がついてしまいましたが、もともと若山さんは、世界で初めてクローンマウスの作製に成功した、発生生物学の世界的権威。STAP細胞問題の際も、“あの若山さんが関わっているなら間違いない”と信じてしまった研究者はかなりいました。今回の研究がうまくいったのも、若山さんが持つ高度な人工授精技術あってのこと」

“宇宙マウス”の誕生は、今後科学の発展にどのように寄与するのか。

「例えば遠い将来、宇宙船で旅に出る際、食糧として船内で家畜を繁殖させることも必要になってくる。その可能性が少し開けたわけです。宇宙空間で人類の生殖活動が可能かどうかの研究にもつながります」(同)

 とはいえ、

「今回の研究結果は、あくまで小さな第一歩。これから、もっと長期間放射線にさらされた精子での実験や、無重力状態における受精など、研究を積み重ねていくことになるでしょう」(同)

“マウスの達人”の面目躍如となるか。

週刊新潮 2017年6月8日号掲載

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