「加計学園」の獣医学部新設、本当に儲かるのか ゴリ押しの末路

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■桁ひとつ違う

 地域的な偏在はあるものの、全国でならせば獣医の数は足りている、というのが、業界の大勢の見方。しかし、近年のペットブームと相まってか、獣医志望者は増える一方だ。これなら、将来に亘って学生のとりっぱぐれはないと考えたのも、想像に難くない。

「少子化が進む中、加計学園は事業を拡大することで、生き残ろうとしている」(大学経営コンサルタントの岩田雅明氏)

 という声もあるが、

「獣医学部の経営は厳しいですよ」

 と言うのは、さる獣医師会の関係者である。

 加計学園が内閣府の公募に応じた際の提出書類によれば、彼らは、定員1学年160人、教員数70人の規模の学部を想定している。また、今治市が議会で明らかにしたところによれば、年間の授業料は200万円超に設定しているのだそうだ。

 関係者が続ける。

「これなら、単純計算しても、年間に入る授業料は、20億円程度。一方で、人件費や実習・実験の費用、施設の整備費で30億円はかかるでしょうから、全然足りません」

 国の助成金に頼って、ようやく収支はトントンになる程度だというのだ。

 現在、私大の獣医学部は5つあるが、どこも経営は厳しく、赤字と黒字が点在するレベル。加計学園の場合、今治市から土地の無償譲渡、建設費の半分にあたる96億円を得たとはいえ、儲かる計算があるとは思えないのである。

 先の北村氏が言う。

「でも、加計さんはそうした事情をあまりご存じではなかった。20億から30億あれば大学は作れると思っていたようで、私が“何言ってるんですか。桁がひとつ違いますよ”と言うと、“えー!”と驚いていました」

 今回のイメージダウンを加味すれば、開学後の苦戦は必至。

 ゴリ押しの“末路”は既に見えているのかもしれない。

特集「『安倍官邸』一強で日本が失ったもの」より

週刊新潮 2017年6月8日号掲載

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