全部他人のせいにする不倫女の行く末を見守るドラマ「あなたのことはそれほど」(TVふうーん録)

芸能週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

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 つくづく思う。不倫にはある種の才能が必要だと。TPOをわきまえ、人に語らず漏らさず。接して漏らさず避妊する。幼児語メール、ハメ撮り、結婚式ごっこなどの証拠は残さず。不倫の才能が豊かな人も稀にいるが、天網恢恢疎にして漏らさず、だ。才能がない人はホントやめたほうがいい。

 私も30代で、自分には才能がないことを痛感。私だけは大丈夫、と思ってしまう青さと甘さと愚かさ。そんな若気の至りを懇切丁寧に曝け出してくれるドラマがある。「あなたのことはそれほど」(TBS)だ。

 内容は国民の好物・W不倫である。主演は波瑠。優しくて料理上手だが、オスとしては1秒もときめかない男(存在も性技も柴犬レベルの東出昌大)と結婚。清楚に見えるが、ひと皮剥けば腹黒ビッチ。初恋の相手(鈴木伸之)と偶然会ったその晩にいきなりセックスして……と書くと「欲望に素直でいいじゃん」と思うかもしれない。いやいや違うの。胸糞悪い女なの。

 なぜなら、常にすべてを人のせいにする「責任転嫁の主語レス女」だからだ。

 まず、東出をそれほど好きじゃないのに結婚したのは、占い師に言われたから。波瑠の母(パンチの効いた元ズベ公っぽい麻生祐未)が営むスナックの常連・根岸季衣に「2番目に好きな人と結婚するといい」と言われ、真に受けたという。え? 馬鹿なの? 占い師のせいにする気満タンだ。

 そして、いとも簡単に鈴木とセックスしておきながら「軽い女と思われたくない」だと。自分の意志と欲望で寝たんちゃうんかい!

(C)吉田潮

 夫からの執拗でウザイLINEは既読スルーし、鈴木に猛烈アプローチ。デートも温泉旅行も自分から誘っておきながら「おかげで私、悪い人になっちゃったよ」とな。不倫旅行のアリバイ作りを依頼し、親友(大政絢)に呆れられブチ切れられるほどの自己中っぷり。

 自分は悪いことをしていない、人を傷つけたくないと言いながら、平気で周囲の人を踏み台にする。罪悪感が一切ナシというのもある意味、新しい。「不倫ドラマは女の罪悪感と必ずセットに」というテレビ局の妙な自主規制コードをぶっちぎり、浮かれまくりで脳内お花畑状態。オフショルダーの62歳・山辺節子もびっくりのイカれ具合なのだ。

 そんな妻の異変をいち早く察知した東出が、これまたウザイ。顔も言動も鬱陶しい。携帯チェックにつまらないLINE連打、SNSには「お天道様は見てる」と脅迫めいた文言をアップ。東出のうわずった声音と棒読みがこんなにしっくりくるときがこようとは。

 不倫相手の鈴木も鈴木で、妻(仲里依紗)の妊娠中は、お外でヤリまくり。コイツもコイツで超弩級の下衆男。自民党議員レベル。つまり、どう転んでも波瑠の行く先は地獄しかないワケで。

 もう修羅場の連続しか想像できない。喜々として火に油を注ぐであろう外野の橋本じゅんに山崎育三郎、中川翔子。確実に見事に発狂するであろう東出&仲。喜劇の予感。TBSお得意の病気オチにしたら承知しねーぞ、と釘を刺しておく。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。