7億円を集めてタイへ逃亡! “超”女子力オバサン「山辺節子」のお花畑日記(下)

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■“超”女子力オバサン「山辺節子」のお花畑日記(下)

〈絵利子、本名節子六十二才。ここタイに来てからは絵利子と名乗っている――〉50人以上から7億円を集めタイへ逃亡するも、現地当局に身柄を拘束された山辺節子(62)。38歳を演じ、31歳のタイ人の恋人を持つ“超”女子力オバサンが執筆した手記である。3月30日に警察に拘束された際に〈山邉節子に戻った〉彼女は、バンコクへ移送、収監されることとなった。

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 その「節子」は勾留され、茫然自失となるものの、とある出来事をきっかけに現実を受け入れられるようになったという。それは不衛生なトイレにまつわるエピソードだ。

〈ストッキングをはいていた節子は水びたしの床に踏み入れることができない。元の場所に戻り、ストッキングを脱ぐ。そしてビチャビチャの床に一歩足を入れた。トイレに入った。次にあっと気がついた。トイレットペーパーなどおいてあるはずがなかった。再び元の場所に戻り、ハンドバックの中をさがした。ひたすらティッシュペーパーが入っている事を願って。期待は裏切られ紙と名の付くものは見当らない。どうしよう……するといつも持ち歩いている化粧用の油取り紙のピンクのケースが目に止まった。小さなこの紙がトイレットペーパーのかわりとなった。この大そう動をきっかけに節子は現実を受け入れる事となる〉

 結果、彼女は身だしなみを整えなければならない、と思い至る。理由はもちろん例の彼である。

〈歯みがき、洗顔を思い浮べるも何も持っていない。携たい用のリステリンでうがいをし、水道で顔を洗った。ハンカチで顔をふいた。小さなハンカチはすぐびしょぬれになった。日本を出る時に持って来たレース入りの美しいハンカチだ。母国を思い出す品として大切に使っていたものだ。朝から彼が面会に来ることになっている。絵利子にならなければならない。化粧ポーチを取り出しいつも通りの手順で化粧を済ませた。髪をまとめ座布団一枚程のスペースで着がえをした。彼の姉が昨日用意してくれた服の中から彼の気に入りの白いシャツとショートパンツジーンズを選んだ。鉄格子の向こうから「ニップン、ニップン」と呼ばれた。タイ人は日本の事をニップンと呼ぶ。ここでは名前で呼ばれることは無い〉

 面会にやってきた彼は彼女のために買い物をしてきていた。その中身に彼女は驚いたという。

〈ノートにボールペン、何よりびっくりしたのはコットンと毛ぬきが入っていたこと。彼はむだ毛を抜く絵利子や、化粧水をコットンに含ませる絵利子を見ていたのだ〉

 だからどうした、という話なのだが、それから4日後、彼が再び留置場に面会に訪れる。

〈帰国日が決まった。十八日だそうだ。「セツコさん、もう二度とタイに入国することは出来ません」小さな声で女性警官は付け加えた。その後、長い時間待っていてくれた彼と面会した。きっとこれが最後になるだろう。再び会うことはかなわないと思った〉

〈彼は家族が心配している事、お庭に植えた木々の事、とりとめのない会話をした。何度も何度もキスをした。「長い期間でも必ず待っている」とひときわ大きく目を見開いて言った。「うん」とうなづき最後の絵利子を演じきった〉

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