「ベトナム少女」殺害犯は地域社会も殺した “性善説が通用しない”時代

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■性善説は通用せず

 NPO法人「体験型安全教育支援機構」の清永奈穂代表理事が言う。

「顔見知りの人が子どもへの犯罪加害者であるケースは珍しくありません。多くの親は『知らない人にはついて行くな』と教えます。だから犯罪者は『それなら知っている人になろう』と考えるのです。彼らは子どもの断りづらい心理を利用しようとする。もし声を掛けられたら『お母さんに聞いてきます』などと、角の立たない断り方を親御さんが教えておく必要があります」

 子どもを狙う人物にもまた、共通項があるという。

「子どもたちには『はちみつじまん』と教えています。これは『話しかけてくる』『近づいてくる』『見つめてくる』『ついてくる』『じっと待っている』、そして『ん?と注意』の略です。これらはいずれも子どもが巻き込まれた過去の犯罪を分析し、前兆として現れたもので、こうした人物からは、大声で叫んでランドセルを捨ててでも逃げるべき。大体20メートルくらい逃げれば、犯罪者は人目を気にして諦める傾向が強いのです」

 防犯ブザーやGPS付き携帯電話など、相手に奪われたらお終い。さきの平代表理事も、こう指摘するのだ。

「『大人を疑ってかかれ』と教えることに異論もあるでしょうが、もう性善説が通用する時代ではありません。子どもたちに『どんな人が怪しいか』と尋ねると『黒いサングラスに白いマスクの人』と答えますが、現実にそんな人はいない。ですから、知っている人でも絶対ついて行くな、話しかけてくる優しい人こそ怖いのだと教えています。最終的には、相手の指を噛むようにとも言います。そこまでしなければ、幼児や児童の安全など、到底守れません」

 1人のエセ保護者によって、重苦しい課題が突きつけられてしまった。

特集「善意の『PTA会長』『見守りボランティア』を不審者に変えた!『ベトナム小3少女』殺害犯は地域社会も殺した」より

週刊新潮 2017年4月27日号掲載

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