犯人は別人格か?「声優のアイコ」事件、判決迫る! 幼児人格「ゲンキ」の手紙を一挙公開

国内 社会 新潮45 2017年5月号掲載

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 女として生まれ男として暮らしていた神いっきが、「女装」して男を誑かし、昏睡強盗を繰り返した「声優のアイコ」事件。裁判では、当初「記憶にない」としていた神被告が、途中から「犯行は別の人格によるもの」と多重人格を主張し、幼児人格「ゲンキ」が法廷に現れたこともあった。その後の裁判は、多重人格を認めるかどうかが焦点となり、鑑定をした精神科医2人が出廷したものの、その判断は真っ二つにわれた。

 はたして神被告は「多重人格」なのか。そして犯行は「別人格」によるものなのか。

 その判決がいよいよ4月28日に下される。

 それを前に、長らく事件を追ってきた写真家のインベカヲリ★氏が、これまでの取材の集大成ともいえるレポートを「新潮45」5月号に発表した。

■留置場で初めて別人格が現れた

“女装時”の神いっき被告(警視庁の公開写真より)

 インベ氏は関係者の取材や裁判傍聴のほか、神いっき被告と30回に及ぶ接見、約40通にわたる手紙のやり取りを行ってきた。その結果、

〈神いっきの中に別人格がいると考えた方が矛盾がないと思うようになった〉

 と書く。※〈〉は本文より引用、以下同

 神被告は、小さな頃から度々記憶をなくしたり、時間の流れが速く感じられることがあり、大人になっても身に覚えのない強盗未遂事件で逮捕されたことがあるという。

〈この時も神いっきには犯行の記憶がなく、不起訴後に「アルコールによる複雑酩酊」との鑑定を受けている〉

 ただ神被告自身に、性同一性障害の自覚はあっても、解離性同一性障害=多重人格との意識はなかった。その症状がはっきり表れたのは、留置場にいる時で、裁判ではその際の留置官のこんな証言も取り上げられたのだった。

〈「自分の身体が操られている、敵はいなくなった、いっき兄ちゃんを助けてあげて」〉

■幼児人格との接見に成功

 インベ氏は、2015年4月の第4回公判に現れた4歳児の人格「ゲンキ」との接見に成功していた。2016年7月、21回目の接見の日だった。

〈私は、それまで読んだDID(編注・解離性同一性障害)の本を参考に、「初対面として会うこと」「幼児として接すること」を心に決め、面会室のドアを開けた。アクリル板を挟んで、反対側のドアから入ってきたゲンキは、一瞬で第4回公判を思い出させるほど、そのときと同じ姿をしていた。目を見開いてキョロキョロし、口をパクパク開け、身体は骨が抜けたように柔らかい。目の前にいるのは確かに幼児であり、私は自然に話しかけることができた」

 そしてゲンキとのやりとりが紹介される。

〈「他に誰がいるの?」

「コウジ兄ちゃん、ミサキ姉ちゃん」

 この時私は、初めてミサキの名前を聞いたのだった。まだ裁判で岡野医師の証人尋問が行われる前である〉

 岡野医師は、解離性同一性障害を認めている鑑定医で、彼自身、別人格との接触に成功している人物だ。

 このあとゲンキは、「声優アイコ」がどんな人格なのかをインベ氏に告げるのである。
 接見のあと、インベ氏は、別人格ゲンキから手紙をもらった。それを以下に一挙公開する。その冒頭はこう始まる。

かおりおねーちゃえ

 おはなしたのしかったです。

でもはやかった。

チョコのおかしありがとう

 続きは掲載の写真(1~3)で読んでいただきたい。神被告の手紙(写真4)を見ると、普段の筆跡とは明らかに違うことがわかる。

別人格・ゲンキからの手紙(1)

ゲンキからの手紙(2)

ゲンキからの手紙(3)

神被告の手紙(4)

 では、いったい神被告の中に何人の人格がいるのだろうか? インベ氏はこう書いている。

〈神いっきが主張するには、これまでに生まれた人格は30人ほど。そのうち今もいるのは15人である〉

 記事では、別人格のプロフィールがわかった5人が紹介されていく。それらを読めば、神いっきは日本の「ビリー・ミリガン」なのだと思えてくる。

 判決まで一週間を切った。日本初の本格的多重人格裁判で、司法はいったいどんな判断を下すのだろうか。

デイリー新潮編集部