【トクホの大嘘】「ヤクルトAce」 “生きたまま腸に届く”は意味がなかった!

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「ヤクルトAce」

 人工甘味料を使ったトクホは、乳酸菌飲料にまで及ぶ。添加物にスクラロースを用いた「ヤクルトAce」がそれだが、キャッチコピーは、「生きたまま腸内に到達する乳酸菌」──。

 消費者にすれば、疑義の消えない人工甘味料にまで“到達”されてはたまらない。

 科学ジャーナリスト・渡辺雄二氏によれば、

「ヤクルトの主成分は乳酸菌シロタ株ですが、これはヤクルトの創業者である医学博士の代田稔氏が1930年に発見したものです。体内で分泌される胃液や胆汁などの消化液でも死滅せず、腸まで届くと言われています。結果、善玉菌が増えて悪玉菌が減ることで腸内環境が整うとされているのです。ヤクルトはこのシロタ株の効能をもって、大人向けの乳酸菌飲料としてトクホを取得しました」

 だが、乳酸菌飲料の金看板とも言うべき“生きたまま届く”というフレーズに首を傾げるのが、千葉大学名誉教授の山本啓一氏(生理学・生化学)である。

「現代の科学のレベルでは、ヤクルトが用いているシロタ株に限らず、腸内細菌の効用については『多数の種類が存在する中で、その多様性とバランスが保たれて初めて健康に寄与する』ということ以上は、まだ何も言えない状況なのです」

 何百種類も存在する腸内細菌は、ひとつひとつが複雑に作用しあっているといい、ある乳酸菌を多く摂取しても確実に効果があるとは言い切れないのだ。

「乳酸菌シロタ株が生きたまま腸に届くのは事実としても、それが我々のおなかに良いのかどうかはハッキリとは分からないわけです。例えば、ビフィズス菌など特定の腸内細菌を増やした結果、おなかの中の養分が不足してしまい、多様性のバランスが崩れてしまう可能性も考えられます」(同)

 秋津医院の秋津壽男院長はこんな意見だ。

「一般的なヨーグルト1個にも、何十億、何百億個という乳酸菌が入っています。それが1万分の1しか生き残らなかったとしても、その僅かな乳酸菌が腸に届けば、増加して大きな数になる。ですから、この手の乳酸菌飲料でなくても健康は維持されますし、特定の乳酸菌でないとダメということもない。無理して高価なトクホを買うよりも、バーゲンセールで買ったヨーグルトを選べば十分ですよ」

“トクホの大嘘”とおさらばすれば、おなかにもサイフにも優しい毎日が送れるというワケである。

特集「トクホの大嘘」より

週刊新潮 2017年3月30日号掲載

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