【トクホの大嘘】10億本突破「伊右衛門 特茶」 体脂肪率も体重も増加の摩訶不思議

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監修:千葉大学名誉教授・山本啓一

■「何の意味もない」

 要は、ケルセチン配糖体の実験結果は、審議を担当する専門家ですら「解釈」に困るシロモノだったわけである。その後、成分が同じ特茶も一緒に審議することになったが、

「メーカーには再度の説明が求められ、結局、許可表示から『お腹周り』、『ウエストサイズ』、『肥満』といった文言が削除されました。ただ、それならば“体重やウエストサイズは減りません”と但し書きすべきでしょう」(植田氏)

 だが、問題はそれに留まらない。実は、先の調査部会では、特茶にとって最大のアピールポイントである「脂肪の分解」の意義についても、疑いの目が向けられているのだ。

〈「脂肪分解酵素」を活性化するということで、それによって「脂肪細胞」から「グリセロール」、「遊離脂肪酸」の放出を促進するということですけれども、「グリセロール」と「脂肪酸」はどこへ行ってしまうのか。それが消費されなければ意味ないですね〉〈全体としてのエネルギー摂取量が減らなければ、その分、「脂肪」がどこかに蓄えられてしまうことになってしまうのではないか〉

 一度は分解された脂肪が、再吸収されて蓄えられていく──。この指摘に首肯するのは、山本啓一・千葉大学名誉教授(生理学・生化学)である。

「根拠論文では、マウスの胎仔由来の培養細胞にケルセチンを与えると、細胞内の脂肪が分解され、脂肪酸とグリセロールになって放出される、としています。ただ、人間の脂肪組織で同じ作用が起きたとしても、脂肪酸とグリセロールが消費されなければ、もとの脂肪に戻ってしまいます。脂肪は燃焼され、炭酸ガスとして体内から出て行くことで初めて消える。単に脂肪酸とグリセロールへの分解を促すだけで、脂肪が減るわけではありません」

 山本氏はさらに、根拠論文で有意な変化が生じたとされる、腹部脂肪面積の減少にも斬り込むのだ。

「結論から言えば、“10・30平方センチ”という減少量には何の意味もないと言えます。というのも、この数字は実験群と対照群のカロリー摂取量の差で説明がつく。つまり、腹部脂肪面積の減少量を重量で表した値と、カロリー摂取量の差を脂肪量に換算した値とが、ほとんど同じになるということです」

 図を参照しながら、山本氏による解説に耳を傾けよう。

 まず、先の高橋氏の発言にもあった通り、両群の腹部脂肪面積の平均は約292平方センチ。これに下腹部から胃の上部までの高さ30〜40センチを掛けると、概算ながら腹部脂肪の体積は8760〜1万1680立方センチと割り出せる。そこに脂肪の比重0・9を掛けて腹部脂肪の重量を求め、減少率が3・5%とすれば、腹部脂肪の減少量は276〜368グラムとなる。

「次に注目するのはカロリー摂取量です。実験群は1日平均1885・2キロカロリーで、対照群は1922・3キロカロリーなので、その差は37・1キロカロリー。おおよそ“9キロカロリー=1グラム”ですから、1日当たり37・1キロカロリーの違いがあれば、脂肪量としては4グラムの差が生じることになります。これが84日(12週間)分ならば336グラムです。腹部脂肪の減少量と摂取カロリーの差がほぼ同じである以上、ケルセチン配糖体には効き目がないと結論付けることができるのです」(同)

 その点について、販売元のサントリー食品インターナショナルに質すと、

「本論文では、対照飲料との比較でカロリー摂取量に差は認められておらず、生活習慣が適正であったことを示しています」

 と回答した。こちらの疑問に正面から向き合っているとは言い難い。

 そのカラクリが明らかになるにつれ、商品のイメージそのものが崩れていくようではないか。そう、「バラ、バラ、バラ。」と。

特集「6400億円巨額市場! 脂肪吸収抑制はインチキ! 分解脂肪は再吸収されていた! トクホの大嘘」より

週刊新潮 2017年3月30日号掲載

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