美輪明宏、最後の“早変わり” 「卒塔婆小町」公演

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若さも老いも演じる

“これを演じるのも最後になるかもしれません”なんて美輪明宏さん(81)が、さびしいことを言っている。

 3月26日から東京・新国立劇場で上演される「葵上・卒塔婆小町」。三島由紀夫の『近代能楽集』より選ばれた2作だ。

 美輪演じる「葵上・卒塔婆小町」が実現したのは、1996年だった。以来、今回で5度目、7年ぶり、久々の上演である。

「葵上」では、かつての恋人を忘れられず生霊となる六条康子を、「卒塔婆小町」では、老婆と、若く美しい小町を演じ分け、早変わりの場面でアッと沸かせる美輪が、今回も演出と美術も担当する。

 三島の自裁は70年のことだが、三島と親交の深かった美輪は、生前に上演をもちかけられていた。ところが、「卒塔婆小町」では老婆を演じなければならない。

「老婆の役だからと断ったら、三島さんに、寺山修司の『青森県のせむし男』では老婆を演じているではないか、と言われたそうです。それならばと、『卒塔婆小町』で、女心を伝えるには老婆から美女への早変わりがある方がわかりやすい、と提案したり、演出のアイディアを三島さんに直接伝えたと美輪さんは語っています。変幻自在でドラマチックな舞台には、三島さんとの当時の対話が込められているのです」(演劇記者)

 能の本質を保ちながら、時代や人物の設定を自由に移しかえた三島の意図を美輪はよく理解していた。

 さて、見せ場の早変わり、小町の衣装の上に、老婆の衣装を重ねている。腰が曲がり歯の抜けた喋り方から美女に一変。踊る場面もあり、体力が問われるだけに、最後かも、と美輪に思うところがあるのだろう。

 公演は東京に始まり、他に全国7カ所を巡る。

週刊新潮 2017年3月30日号掲載