移民受け入れは断固拒否すべきだ 青山繁晴・百田尚樹の「大直言」対談(5)

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海に囲まれている日本にとっては、欧米ほど深刻化していないが、北朝鮮が暴発すれば大量の移民が押し寄せる、といったシミュレーションもある

 トランプ大統領が打ち出している政策の中でも、もっとも物議を醸しているものが、移民対策だろう。反トランプの論者は、アメリカから寛容の精神が失われつつあると嘆き、また怒りを表明している。

 しかし、移民や難民に対して厳しい姿勢を示しているのはアメリカだけではない。ヨーロッパでも同様の傾向が強まっている。

 幸いなことに、海に囲まれている日本にとっては、移民や難民の問題は欧米ほど深刻化していないが、これからもそんな幸福な状態が続くとは限らない。北朝鮮が暴発すれば大量の難民が押し寄せる、といったシミュレーションもある。

 「多様性を大切にしよう」「排外主義は時代遅れだ」といった主張は、「政治的に正しい」とされやすい。「不法移民は出て行け」よりも知的な響きがあるかもしれない。

海外からの移民や難民についてどう考えればよいか。

 作家で参議院議員の青山繁晴氏と、作家の百田尚樹氏の10時間を超える対論をもとにした新刊『大直言』の中から、この問題を取り上げている箇所を引用してみよう。

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■グローバリゼーションが国家意識を強める

百田 これはわたしの感覚ですが、むしろこの30~40年、国家意識が薄れていると感じています。たとえばわたしが子供の頃は、祝日になれば日の丸をもっとよく街中で見たものですよ。今は見ません。当時は君が代を歌うのが当たり前でした。

 わたしが小学校の頃は、元日に学校に集まって国旗を掲揚していました。普通の公立小学校ですよ。今はそんなこともありません。テレビでも君が代や国旗の扱いが軽くなってしまっています。この風潮を象徴するのが、民主党の鳩山由紀夫幹事長(当時)の「日本列島は日本人だけのものではない」という発言でしょうか。とんでもないことです。

青山 鳩山さんや、仙石由人さんに影響を与えているのは、政治学者の松下圭一さんという方の思想で、簡単に言えば、国家はグローバル化に伴って解体されていくものであり、日本はそれを先どりしていくべきだ、というものです。一種の国家否定主義なんですね。そういう人からすれば、百田さんやぼく、あるいは安倍総理のような人間は、時代を逆行させるとんでもない輩なわけです。そういう、いわば観念的政治学の系譜がある。

 しかし、世界を歩いてみればわかりますが、グローバリゼーションが進んで、むしろ人々は自分のアイデンティティーを深く求める傾向が強くなっています。祖国とは何か、わたしはどこから来て、どこへ向かうのか、ということを考えるようになっている。これは人間として当然のことです。

 残念ながら紛争の多くの原因の一つがそこにあります。しかし、紛争の原因ならば良くないもの、というのは短絡的な考えに過ぎません。グローバリゼーションの結果として、人々が国家観も含めたアイデンティティーを追求しているのは当然の成り行きであり、だとすれば、それを前提としたうえで、紛争を避ける現実的な方法を考えなくてはならない。

 ところが、この現実を見ずに「国家はそのうち無くなる」という空理空論を信じた人たちが中心にいた政権が、日本では3年間続いてしまった。その害は甚大でしたよね。このことと蓮舫さんの二重国籍問題は完全につながっています。

■移民受け入れは断固拒否すべきだ

百田 まったくその通りです。ヨーロッパが前の100年にどれだけ戦争をして、どれだけ国境線を書き換えたかを思い出して欲しい。境界線を引いては消し、の繰り返しだったのです。それはなぜかと言えば、何度やっても一つにはなれなかったからなんですね。

 象徴的だったのは、ソ連崩壊後に東欧で見られた現象です。ソ連という重しがなくなって、雪崩を打つように東欧の国々の体制も崩壊し、分裂しました。

 その時に、「えーっ!? こんな国があったのか」というような国が誕生した。たとえば、急にセルビアなんて国が復活してきた。

 セルビアと聞いて、多くの日本人が知っているのは、第一次世界大戦のきっかけになったオーストリア皇太子の暗殺事件の犯人がセルビア出身の青年だった、ということくらいではないでしょうか。たしか高校生の時に習いましたが、その時には「セルビアなんて国は、もうないよな」と思ったものです。1929年には、ユーゴスラビアになっています。

 ところが、そんな消えたはずの国が、また復活した。ユーゴスラビアからセルビア・モンテネグロとなり、セルビア共和国へとなった。80年前に逆戻りです。

 ここからわかるのは、そのくらい国家というもの、民族というものは簡単に消せないという事実です。簡単に同化はしない。

百田尚樹氏と青山繁晴氏

青山 その旧ユーゴ戦争の取材に行ったことがあります。その際、印象的だったのは、図書館と学校と教会が一番徹底的に破壊されていたということでした。破壊した側の兵士に、なぜそういうことをしたのかを聞くと、あれこそが同化政策の象徴だから、というのです。「Back to me(自分たちに戻るためだ)」と拙い英語で一所懸命に説明していましたよ。

百田 ソ連はそういうことを知っていたからこそ、民族浄化作戦を実行したんです。数千人の少数民族を、数百人単位にバラバラにしたうえで、各地に移住させた。そうすれば50年もしないうちに、固有の言語、文化、風習をなくしてしまう。それでその民族は地上から消えてしまう。この手法で、ロシア革命以降に消え去ってしまった少数民族は何百とあると言われています。

青山 この話は、ブレグジット、英国のEU離脱ともつながりますね。そして思い出されるのは鳩山由紀夫さんの唱えていた「東アジア共同体」構想です。EUに出来たことなんだから、東アジアでも出来るだろう、宗教も文化も乗り越えられるだろう、というんですね。

百田 もう夢物語としか言いようがありませんね。現実を知らないにもほどがある。

青山 ええ、しかもそれが本当にきちんとした「夢」であって、最終的に目指すべき正しい目標ならばまだいいんです。しかし、EUで皆が悟ったのは、それは「夢」としても間違っている、ということです。わたしが誰か、ということを人間は考える生きものなのに、主権を失い、「皆一緒」にすると、結果として何のために生きているかがわからなくなってしまう。

 テレビなどではEUの離脱について「イギリス人は誇りが高いので、フランスやドイツの指図を受けるのが嫌になった」といった解説をまことしやかに語る人がいました。でも、それは嘘です。イギリスはEUから大きな恩恵を受けている国で、そのことは国民もわかっています。本当は移民の流入の問題が大きいんです。

 だから、安倍政権下の内閣府が移民を積極的に受け入れようとする試案をつくったこと、それによって経済を活性化させようとしたことは、大間違いです。

「毎年20万人を受け入れる」といったことが検討されているのですが、とんでもない。これは選挙中も何度も言いました。

百田 イギリスに限らず、ドイツもスウェーデンも移民で大変なことになっていますよね。そのへんがたしかにわかっていない人が自民党にも多い。メルケル首相は、難民の受け入れに対してきわめて寛容で、そのことである種の人たちから賞賛を浴びました。しかし、ベルリン市議会選挙の敗北後に、自らの準備不足を認めて「時計の針を戻したい」とまで発言しています。

青山 「外国人労働者」といっても、単に言葉を換えているにすぎないケースもあることに注意しなければなりません。ぼくが移民政策に反対していることを知って、官僚がレクに来ます。彼らには「言葉を換えても同じことであって、志を持って官僚になったんだろうから、国益のために考えてほしい」と言って、ヨーロッパで見た現状を話して、なるべく洗脳するようにしているんです。二、三十人に1人はわかってくれるでしょう。

百田 これは難しい問題で、たしかにこのあと当分は、労働力が足りなくなるんです。介護などの現場でも必要とされるでしょう。そのために移民を受け入れよう、という理屈は一応わかるんです。しかし、彼らが一定期間経って、仕事がなくなってから、祖国に帰ってくれるのか、それを考えた方がいい。

 たとえば30歳の労働者を受け入れて、20年~30年働いてもらったとしましょう。その人が、年をとって働かなくなり、なおかつ日本に住み続けた時に、何らかの形で最低限の生活をさせることになります。そのためにかかる金額を考えた場合に、彼がもたらした以上の出費を国がしなくてはいけなくなるはずです。

 だから、移民の受け入れというのは、国家においては一時的にシャキッとする覚醒剤を打っているようなものになりかねない、とわたしは思います。あとから見たら大きなダメージを受けることを多くの議員が考えていない。

青山 労働力の不足を解消したいのであれば、外国人に頼る前に女性や高齢者が働けるようにしたほうがいいですよ。安倍さんも「働き方改革」を進めていくとおっしゃっていますが、残業の話だけではなく、こちらをしっかり考えるべきです。

 外国人――それも多くは中国人でしょう――が大量に入ってきたらどうなるか。彼らが働き盛りの年齢でやって来て、日本で子供を作ったとしましょう。その時に、彼らはどう考えるでしょうね。ぼくならば、こんなに安全で清潔な国から、不潔な場所も少なくない、賄賂まみれで危険の多い国に子供を帰したいとは思わない。

 そういう子供が成長してきた頃には、AI(人口知能)の進歩によって、人間の仕事は減っているはずです。今ぼくは近畿大学の経済学部で教えているんですが、彼らには「この先、君たちの仕事がなくなるかもしれないことは考えたほうがいい」と言っています。というのも、文系の仕事はAIによってどんどん無くなると見られているからです。

 少し前まで、AIが肩代わりする仕事は、工場など生産に関わるものが中心でしたが、今は企業の経理や総務といった仕事もビッグデータを活用してAIに任せる企業がアメリカで出てきている。いずれは日本にもその波が来る。しかもこの流れは止まらない。限られた仕事を日本人と、在日中国人らで奪い合うようになる。

 その時に何が生まれるか。

 憎悪ですよ。

 リベラルな方たちは、「多様性」を尊重して、移民を受け入れようと言います。しかし、受け入れた結果はもう目に見えているじゃないですか。ヨーロッパで起きていることが日本で起きないと考える根拠が無いでしょう。

 それなのに、リベラルではない安倍政権周辺の人ですら、移民もしくは外国人労働者を受け入れようと言っている。一体、何を考えているのか。

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 移民に対して厳しい言動を繰り返すトランプ大統領を「野蛮だ」「無知だ」と非難し、嗤うのは簡単だ。しかし、先を見すえているのはトランプ、反トランプどちらなのだろうか。

デイリー新潮編集部

2017年2月15日掲載

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