トランプ、「4年以内に弾劾」賭け屋オッズは2倍 

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■反トランプの正体 親トランプの素顔(上)

 隣国に続いて、太平洋の向こうのトップも弾劾されることになるのか。不支持率51%で船出した前代未聞の「不人気大統領」トランプ氏(70)。しかし一方で、彼は大統領選を制した「人気者」でもある。入り乱れる反トランプと親トランプの不可思議な実相や如何に。

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〈メキシコ国境沿いに壁を作る〉──オッズ7倍。

〈次期米国大統領選に長女のイヴァンカ氏が出馬する〉──オッズ81倍。

 目下、英米の賭けサイトでは「トランプ占い」が隆盛を極めていて、こんな物騒なものまである。

〈就任中に暗殺される〉──オッズ101倍。

〈核戦争を始める〉──オッズ251倍。

 そして、

〈トランプ大統領が4年の任期中に弾劾されるか辞任する〉

 この賭けの配当は「イーブン」。100円の賭け金に対して配当もイーブンの100円、賭け金も戻るのでオッズ換算すると2倍。この数字は、昨年のリオ五輪で実際に金メダルに輝いた体操男子団体日本代表の優勝オッズとほとんど同じということになる。あくまで賭けの世界の話ではあるが、トランプ大統領が4年もたない可能性は極めて「現実的」と言えるわけだ……。

■高まる反トランプ熱

トランプ大統領(Wikimedia Commons/from the White House)

 1月20日、首都ワシントンでの就任式を経て、正式に第45代米国大統領の座に就いたトランプ氏。彼はその場で、

「この日から、『米国第一』だけになるのです。米国第一です」

 と、世界のリーダーたる米国が自己利益のみを追求すると言い切った。この傲慢な姿勢に対し、改めて全米および各国に動揺が走ったのである。

 早速、就任式翌日の反トランプデモにワシントンだけで50万人が集結し、80カ国で計470万人が「トランプ、NO!」と声を上げたことからも、彼への不信感、そして忌避感が満ち満ちていることが伝わってくる。その結果が先の「2倍」に繋がったと言えよう。

 畢竟(ひっきょう)、反トランプ熱は高まるばかりで、デモに参加した歌手のマドンナが、

「この暗黒の中をともに行進しよう。一歩ずつ、恐れていないと足を踏みだすのだ」

 と訴えれば、映画監督のマイケル・ムーアもツイッターやインタビューで、

「彼は悪意に満ちたナルシストのサイコパス。とても危険な男だ」

「ナルシストと官僚は非常に危険なコンビネーション。なぜならそれは、私、私、私……私にとってどんな利点があるかを考えるからだ。彼らは法を破る」

「トランプには核ボタンを持たせる前に精神鑑定を受けてもらいたかった」

 こう「先制弾劾」を喰らわした。また、ハリウッド俳優のリチャード・ギアやメリル・ストリープが激しいトランプ批難を行っていることも広く知られている。「分断された米国」とのイメージとは裏腹に、彼の国は反トランプで「一致結束」しているようにも映る。

■日本も「被害者」

 それもむべなるかなで、「メキシコの壁」発言や、大統領選勝利後初の記者会見での「私は神が創造した最大の雇用創出者になる」といった全能感を剥き出しにした彼の言葉に、不安を覚えるのは当然である。事実、その「被害者」の一員に安倍政権も名を連ねていて、官邸関係者は、

「総理の悲願であるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)締結は、トランプが就任式直後に離脱声明を出したことで砂上の楼閣と化しました」

 とした上で、さらにこう懸念する。

「トランプは、日米同盟の何たるかが分かっていない。彼は日本が安全保障で『タダ乗り』をしていると主張しています。確かに日米安保条約第5条には、米国の日本防衛義務が記されている。他方で第6条には米軍が日本に基地を置き、使えることが明記されてもいる。これは極東だけではなく国際軍事戦略上、米軍にとって極めて有用な条文なんですが、残念なことに彼は安保条約を読んだことがないみたいで……」

 外務省関係者が続けて嘆く。

「トランプに日本の考え方を何とか刷り込みたい。それには、何をおいても首脳会談が重要ですが、就任後早々の1月末にも訪米したいと打診したものの、はっきりとした返事が来ませんでした。トランプ陣営も混乱しているらしく、どのチャンネルを通じて交渉すればよいのか、正直なところ掴めない。長女であるイヴァンカの夫、クシュナーが最重要のキーパーソンであるのは間違いありませんが、彼とはまだ上手くコミュニケーションを取れていないのが偽らざる実状です」

 米国勤務経験のある外務官僚が解説するには、

「トランプは、『私は頭がいいのでインテリジェンス・ブリーフィングは不要』と公言していました。ブリーフィング嫌いと言えば、官僚の話を全く聞こうとしなかった田中真紀子元外相。彼女に『刷り込み』をするのと同様、説明を受け付けようとしないトランプに日本の考え方を伝えるのは至難の業でしょう」

 だが、「2倍」であっても、「田中真紀子似」であっても、トランプ氏が大統領選で勝利したのは厳然とした事実であり、それはすなわち彼が米国で多数の支持を集めたことを意味する。

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 反トランプの正体 親トランプの素顔(下)へつづく

特集「『4年以内に弾劾』賭け屋オッズは2倍 反トランプの正体 親トランプの素顔」より

週刊新潮 2017年2月2日号掲載

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