祖父に捧げる「新藤風監督」沖縄ロケ作品

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新藤風監督11年ぶりの新作が公開された(写真はイメージ)

 2012年に100歳で天寿を全うした巨匠、新藤兼人監督を祖父に持つ新藤風(かぜ)監督(40)の11年ぶりの新作「島々清(しまじまかい)しゃ」が、1月21日から全国で公開された。

 舞台は沖縄だ。三線の名手である祖父と暮らす少女(伊東蒼)は特殊な音感の持ち主で変わり者扱いされ、母親や友達との関係にも悩んでいる。コンサートのため島を訪れたヴァイオリニスト(安藤サクラ)と出会い、次第に心を開いてゆく。

 新藤風監督は言う。

「29歳から6年ほど祖父と一緒に暮らしました。94歳の時に入院して付き添ったことがきっかけでした。祖父は映画が全てです。結婚しなくても子供を産まなくても構わない、いい監督になりなさいと言うのです」

 家でも現場でも祖父につきっきりで、自分の作品どころではない。「石内尋常高等小学校 花は散れども」(08年)、遺作の「一枚のハガキ」(11年)では車椅子の背を押し補佐を務めた。

「撮影中に診療を勧めると、また入院しなさいと言われたらどうする、と怒り出したこともありました」

 新藤風監督は祖父の「三文役者」で助監督を務め、2000年に映画を作る企画に応募。1000万円の予算で、脚本と監督を手がけた「LOVE/JUICE」は、初の監督作品にして、ベルリン国際映画祭で新人作品賞を受賞した。

「祖父を看取り納骨を終えた後、なんだかぼけっとしてしまったのです。その時、以前に音楽監督としてお世話になった磯田健一郎さんから、自分の脚本を監督して欲しいとお話をいただきました。皆さんの力や情熱に助けられてこの作品ができたのです。祖父が、映画は集団創造だ、みんなの心がひとつになるかどうかで出来が決まる、といつも話していたことを実感しました」

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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