“フィリピンの大仁田厚”、今度は避妊具を配布

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 昨秋、小誌(「週刊新潮」)編集長の命により“フィリピンの大仁田厚”の異名を奉ったフィリピンのドゥテルテ大統領。

 悪ノリした大仁田氏は、大統領の影武者も辞せず、と記者会見を開いた──などといった話はさておき、

「“麻薬撲滅戦争”を開始しておよそ半年。すでに国内の麻薬犯罪者の死者数は6000人を超え、麻薬組織からは大統領の暗殺指令が出た、ともいわれます。確かに影武者が必要かもしれないこの状況で、ドゥテルテ氏が今度は貧困層への避妊具の大量無料配布を指示。“避妊大作戦”の開始だ、と喝采を浴びています。が、避妊を認めないカトリック教会からの反発は必至でしょう」(国際部記者)

 避妊具を入手できない貧困女性200万人に対し、無料で提供せよと大統領令で指示したドゥテルテ氏。

 同志社大学助教の木場紗綾(さや)氏は言う。

「フィリピンの国民の約8割はカトリック信者で、カトリック教会は中絶はもちろん避妊も公式に認めていません。経済発展で中間層が育ち、影響力が弱まったとはいえ、教会の介入もあり、失脚へと到った政権もあります。依然、教会にはあなどれない力があります」

 最高裁も2013年には“避妊普及法”の施行延期を命令、彼の国で避妊は一筋縄でいかぬ問題なのだ。

 ではなぜドゥテルテ氏は力瘤を作ってみせるのか。

 名古屋大学准教授の日下(くさか)渉氏は言う。

「貧困対策でしょう。今や人口1億を超えるフィリピンの貧困率は21・6%。大統領はこれを13%に下げるとしています。避妊具の普及や性教育の充実といった家族計画を促進することで、貧困層の出生率を抑え、貧困の悪循環を断ち切ろうというのです」

 国連によると、フィリピンはアジア太平洋地域で唯一、10代の妊娠率が上がっている国で、15歳から19歳の女性10人に1人が子どもをすでに産んでいるか妊娠中だったという調査もある。

「それにドゥテルテ氏は高校時代、教員の神父から性的悪戯を受けたと公言するなど、教会への反発を隠していません」(同)

 大敵ござんなれ、とばかりのこの姿勢、ただの猪武者ではなさそうだ。

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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