日露首脳会談、プーチンの大遅刻に日本が抗議しなかったワケ

政治週刊新潮 2016年12月29日・2017年1月5日新年特大号掲載

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 日露戦争を描いた司馬遼太郎の『坂の上の雲』。そのなかで、ロシアで迫害されたユダヤ商人がこうつぶやいている。〈残念ながら、ロシア王室には約束を守る習慣がないのです〉。王室のみならず、プーチン大統領にもその習慣がないようで、約束の時間より2時間半遅れで山口宇部空港に到着した。非礼といわざるをえないが、それでも抗議しなかったのはなぜか。

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シリア問題が遅刻理由というが

 ロシアの大統領報道官は、遅刻の理由を“シリア問題を協議していたためで、日露首脳会談の日程には影響はない”と説明した。国際ジャーナリストの山田敏弘氏によれば、

「プーチン大統領は遅刻の“常習犯”です。2015年のローマ法王との会談では1時間の遅刻。その他にも、インドのモディ首相や英国のエリザベス女王、オバマ大統領など“被害者”は少なくありません。なかでも、ドイツのメルケル首相は4時間も待たされました。プーチン大統領は、遅刻した方が交渉を優位に進められると考えているフシがあります」

 安倍総理のお膝元にある巌流島で、かの宮本武蔵が佐々木小次郎を破った“戦略”を彷彿とさせるが、

「プーチン大統領は、相手を選んで遅刻しています」

 こう指摘するのは全国紙の外信部記者だ。

「プーチン大統領も、中国だけは別格です。ペルーの首都リマで行われた中露首脳会談では、定刻通り習近平国家主席の前に姿を現しているし、随行した中国財界トップとの会食にも遅れなかった。欧米から経済制裁を受けているロシアにとって、中国の存在は重要。それで礼を欠くようなことをしなかったのでしょう」

 この遅刻魔に対してドイツのメルケル首相は激怒し、インドのモディ首相は待たずに寝室へ向かうという逆襲に出たという。だが、安倍総理は嫌味の1つもいわず、共同記者会見に臨んでいる。国際問題研究家の瀧澤一郎氏が解説するには、

「安倍総理が“ウラジーミル”とファーストネームで呼び親密さをアピールしたのに対し、プーチン大統領は“ガスパジン・アベ”、ミスター安倍と突き放していたのが印象的。安倍総理が、まるで揉み手をしているかのように見えました」

 いくら待たされても、いくら冷たくされても、安倍総理は“信頼関係を築く”と重ねて強調した。

「外務省高官は、“プーチンのご機嫌を損ねたくない。遅刻を抗議して、帰国されたら大変なことになる”と言っていました。こんな弱腰外交を続けていたら、北方4島は永久に戻ってこないでしょう」(先の記者)

 一方的な片思いとも思える安倍総理。耐え忍ぶだけでは、プーチン大統領のハートは射止められない。

特集「元KGB『プーチン』大統領に期待する方が大間違い! 新聞が書かない『おそロシア首脳会談』7つの不審」より