萩原流行との日々を妻が振り返る 「お小遣い3万円、買い物にも付いてきた」

エンタメ 芸能 週刊新潮 2016年12月22日号掲載

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 萩原流行(ながれ)(本名・萩原光男)のトレード・マークは、ウエスタンハットだった。劇作家・つかこうへいに認められてメディアへの露出が増え、50代からはバラエティー番組にも出演。これからという時に、突然別れがやってきた。妻のまゆ美さんが最愛の夫と暮らした日々を振り返る。

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 私は、主人をハギと呼んでいました。ハギが亡くなったのは昨年4月22日。実は、亡くなる直前、胸騒ぎがしていたのです。当日、ハギは美容院へ行くといって、バイクで自宅を出たのが夕方6時頃。家の前で「気をつけてね」といったら、ハギは「わかった」と手を振ってくれました。それから1時間後、私がラインで〈雨、大丈夫? 結構、降っているよ!〉などとメッセージを送ったのですが、返信がなかったのです。

 その30分後、警察から私の携帯電話に「ご主人が交通事故に遭って、応急処置をしている」という連絡が入り、さらにその3分後には「亡くなりました」と。急いで病院へ向かったのですが、着いた時にはすでにハギは息を引き取っていました。

 翌朝のニュースでは、ハギが〈事故を起こした〉と報じられて、唖然としました。警察からは何も説明を受けていませんでしたから、なぜ、状況がわかっていないのにそんなことがいい切れるのか、実際には警察車両による接触が原因だったのです。それで警察への不信感が募っていったのです。

 警察車両を運転していた警察官が略式起訴されたのは今年8月で、ハギのバイクが返ってきたのが10月。なぜ、こんなにも時間がかかったのか。ハギの遺体は司法解剖までされている。一切、事件性なんてないのに、なぜ司法解剖されなくてはならなかったのか。要するに、うつ病で薬を飲んでいたので、何かしらハギに責任を押し付ける口実を、警察が探していたわけでしょう。

 ハギとの出会いは、お互い20歳で「自由劇場」の舞台に参加した時でした。毎日、朝から晩まで稽古場で顔を合わせ、半年後に付き合い始めて、それから西荻窪のアパートで半同棲生活がスタートしたのです。結婚したのはその2年後で、杉並区の式場が空いていた9月4日でした。

■「アイスが食べたいの!」

 ハギは38歳の時、青山劇場で舞台「GANKUTSU OH」の主役を務めました。巌窟王役のハギが16分間独唱するところから始まる演劇。本人も一世一代の舞台だと考えて猛稽古して本番に臨み、大きなプレッシャーにも打ち勝って公演を成功させました。ですが、終わってみたら、精神を消耗してしまった。その後、「リハーサルでいえた台詞が飛んで、今日は本番で出なかった」と。それを聞いて驚きました。ハギは役者としては天才だと思っていたし、普段だったら仮に舞台で台詞が飛んでしまったとしても、アドリブで何とか対応していましたからね。

 それで精神科病院へ連れて行くと、診断されたのはうつ病。不幸中の幸いというのか、実は私が先にうつ病になっていたので対処の方法はわかっていました。うつ病になったハギが私に「大変だったんだね。君がどういう状況だったか、理解できたよ」と。2人してうつ病になったのは大変でしたが、ハギが理解してくれたことで気持ちがとても楽になったのです。

 その後、ハギは亡くなるまで穏やかな生活を送っていました。仕事が増えても、銀座で豪遊するようなタイプではなく、普段は自宅でDVDを観るのが大好きでした。財布も私が握っていて、お小遣い制で何かあればその都度3万円を渡すシステムでした。趣味のウエスタンファッションは、仕事でアメリカへ行った時にカードで買ってくる。昔から西部劇に憧れていて、下積み時代に「お金が入ったら、あんな格好がしたい」といっていました。

 仕事から帰宅すると、「今日はこんなことがあった」といいながら、私の後ろを付いて歩くし、オフの日はずっと一緒。近所へ買い物に行く時も、私が友人とお茶をする時も、「僕も付いて行っていい?」と聞いてくる。

 50を過ぎて太りやすくなっていたので、甘いものを控えさせていましたが、コンビニへ行くとアイスを欲しがるのです。私が「ダメ」というと、周囲の人の目もはばからず、「アイスが食べたいの! 買って、買って」と、地団太を踏む。ピュアで、子供のような人でした。

 事故後、「一緒に行こうよ」というハギの声が聞こえるんです。今もハギの存在を身近に感じています。それに対して、「まだ、私にはやることがあるから待っててね」と返事をしています。2人で子供のように可愛がっていた猫が生きている限りは、世話をしなくてはいけない。それと事故の処理が残っています。誰がどんな責任を取ってくれるのか見届けない限りは、ハギのところへは行けません。

特集「デスパレートな妻たち Season5」より