ケネディ駐日大使、トランプ当選で去就は “お通夜”状態になった大使館

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 アメリカ大統領選挙の投開票日(日本時間11月9日)、東京の米大使館公邸では、外交関係者など200人以上が集まって開票速報を見守っていた。そこで、トランプ当選のニュースを目の当たりにしたキャロライン・ケネディ大使の胸中はいかばかりだったか。

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息子を「楽天」に入社させるなど、すっかり日本暮らしがお気に入りのケネディ大使

 その日、ケネディ大使に招かれた出席者の1人が振り返る。

「大使館公邸には開票速報を見守るスペースが設営され、まるでお祭り会場のようでした。紅白の風船が飾り付けられ、中央と後方に大きなテレビモニターが置いてある。入り口にはトランプ、ヒラリー両氏の等身大のパネルが置いてあり、皆、記念撮影を楽しんでいました」

 会場には生バンドが入り、ワインにケーキ、サンドイッチも用意されている。どうせヒラリー氏の勝ち、軽く一杯やりながら観戦しようという趣向なのか。実際、ケネディ大使はヒラリー氏の支持者でもある。

 午前10時過ぎ、ケネディ大使が現れると、挨拶が始まる。

〈私の父が宗教の壁を乗り越えたように、オバマ大統領が黒人初の大統領になったように、今日は米国民が自由の価値や民主主義を示す日です〉

 ところが、開票が進むと重たい空気が流れだす。

「11時ごろになって、接戦の州でヒラリーさんが負けると何とも言えない雰囲気になってきました。“危ないね”といった声があがり、ケネディ大使も自室にこもってしまいました」(同)

 トランプ氏の勝利が濃厚になると、皆潮が引くように帰り支度を始めた。ケネディ大使の去就を悟ったかのように。

■余計なお世話ばかり

 在米ジャーナリストの古森義久氏が言う。

「トランプ政権になればケネディさんが駐日大使の座を離れる可能性は高い。ケネディ家のブランドもあって、彼女は日本人、とくに女性からはずいぶん好感をもたれましたが、安全保障や外交についてはシロウト。日本との防衛・外交関係を重視しないオバマ大統領の姿勢を象徴するような存在でした」

 実際、ケネディ大使が日本に来て話題になったことと言えば、ポール・マッカートニーの日本公演を楽しんだり、プライベートでの京都観光、ジャイアンツ戦の始球式と「物見遊山」にいとまがない。一方で、外交官としては余計なお世話ばかりだった。

「2013年、安倍総理が靖国神社を参拝した際には、中国の味方をしているかのように“失望している”という声明を出したり、ツイッターに“イルカの追い込み漁に反対します”と書き込んで環境テロリストを大喜びさせたものです」(外信部デスク)

 またある時は、「憲法9条にノーベル平和賞を」という左翼系団体の運動を絶賛し、新安保法制に冷水をかけたことも。そんな心配をよそに、息子を「楽天」に入社させるなど、すっかり日本暮らしがお気に入りのケネディ大使だが、これからの身の振り方はどうなるのだろう。福井県立大学の島田洋一教授(国際政治学)によると、

「アメリカでもケネディのブランドは健在で、特に民主党内では“皇族”のような扱いです。駐日大使として箔をつけた彼女は、いずれワシントンに戻るという見方があります。次の大統領選を考えてのことです」

 TPPの頓挫や米軍駐留費の増額など、日米関係はこれから難しくなる。「物見遊山外交」を切り上げるには良い潮時である。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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