ブルース・ウィリスも出演 中国製作の反日映画、公開のメド立たず

中国 週刊新潮 2016年12月8日号掲載

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 大作映画であることは間違いない。「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスが出演し、美術監督を務めたのは「リーサル・ウェポン」のメル・ギブソン。しかも習近平指導部がバックアップし、製作費70億円が投じられた。中国本土のみならず、米国でも公開が待ち望まれているが、封切りのメドがまったく立っていないという。

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映画を製作した上海快鹿投資集団(同社公式HPより)

 問題の映画は、中国で製作された「大爆撃」。日中戦争中、旧日本軍が空爆した重慶に住む人々の交流を描いた戦争映画だ。撮影終了後の昨年11月、中国空軍を支援した米軍の教官を演じたブルース・ウィリスは、米ロサンゼルスで行われた完成記念パーティーの席でこう語った。

「『大爆撃』はとても面白い。家族も面白かったといっていた。また、家族と一緒に観られるように米国での公開を期待している」

 中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏によれば、

「映画を製作したのは、上海快鹿投資集団です。快鹿は、13年前にケーブルワイヤーの国営メーカーなど4社が合併して不動産やホテル、商社、金融などを手掛けていたが、数年前から“映画とインターネット、金融の融合”を謳っています。昨年、快鹿の会長は公開前にもかかわらず、『大爆撃』製作の功績が認められて、“抗日・反ファシズム勝利70周年特別賞”を受賞しました」

 今年初頭の公開を予定していたが、それが夏になり、9月に延期された挙句、未だに公開に至っていない。

■7・8%の高利回り

 映画のテーマは、無辜の市民を空爆で1万人以上殺害した旧日本軍の残虐さだが、史実として確たる証拠はない。では、この反日映画に何があったのか。

「実は、快鹿の経営問題が発覚して、映画の公開どころではありません」

 こう指摘するのは、中国駐在の商社マンだ。

「今年3月、当局の調査で快鹿傘下の映画会社が興行収入を水増しし、製作目的で集めた資金を他に回していたことが明るみに出ました。また、快鹿傘下の会社が販売した金融商品の利払いが遅れたこともあり、快鹿本社や関連会社前に投資家が詰めかけて大騒ぎになったのです」

 つまり、経営が左前になり映画公開どころではなくなったわけだ。快鹿の関連会社の1つは、年利7・8%を謳った「東影宝影視投資計画」なる映画製作の金融商品を売り、約5億円を集めていたという。

「中国経済はバブルが続いていますが、昨年6月に株式市場で“チャイナ・ブラックマンデー”と呼ばれる大暴落が起きたし、不動産投資はトラブルが多くて一般投資家は手控えている。まして、銀行の定期預金は年利1・5%〜3%なので、年利7・8%は魅力的。快鹿は他にも映画製作を目的にした金融商品を売り、約20万人から1600億円以上を集めていました」(同)

 快鹿は自社のHP上で〈10月初めから全額払い戻す〉と発表したものの、映画の公開と同じく、こちらも約束が果たされないままだ。そこで快鹿に話を聞くと、“何もわからない”を繰り返すばかり。

「来年、中国の映画興行収入は1兆1536億円になり、米国を抜いて世界一になると予測されています。快鹿と同様の手口で、資金を集めている中国企業は少なくありません。インターネットなどで類似の金融商品を見つけても、投資は慎重に判断した方がいいでしょう」(高口氏)

 反日映画が、お蔵入りしそうなのは慶事ではないか。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より