トランプ次期大統領、ドイツ系移民のルーツ 売春宿で財を成した祖父

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 米国は、1821年から100年の間に約3300万人の移民を受け入れた。ドナルド・トランプ米次期大統領(70)は、メキシコとの国境に壁を築くと宣言するなど、移民に対して厳しい。だが実は彼の祖父も、ゴールドラッシュの時代に米国に渡ったドイツ系移民である。売春宿の経営で財を成したトランプ家のルーツを辿る。

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ドナルド・トランプ米次期大統領(70)

 米国では、不動産王として知られるトランプ氏。が、そもそも不動産業を始めたのは、祖父のフリードリヒ・ドランフ氏(後にフレッド・トランプに改名)である。在米記者が言う。

「フリードリヒはドイツ生まれ。実家はカルシュタットという町で、葡萄畑を持ちワイン醸造業を営んでいました。しかし、父親が早くに亡くなり、16歳(1885年)の時に、仕事を探すためにニューヨーク行きの船に乗ったのです。船を降りるとすぐにドイツ語が話せる理髪師と知り合い、その男の見習いとして働き始めた」

 住まいは小さなアパート。

幸せな生活ではなかったが、

「22歳の時、ワシントン州のシアトルに向かい、赤線地帯で酒場兼売春宿を開業。このビジネスのコツを掴んだ。数年後、今度は酒場を売り、モンテ・クリストという炭鉱町の近くに初めて不動産を購入し、炭鉱労働者のためのホテルを建設したのです」(同)

 ここが下火になると、今度はカナダのクロンダイク地方へ移った。

「この土地で金鉱が発見され、ゴールドラッシュが始まったのは96年。フリードリヒは、金鉱に行きつくまでに必ず通らなければならない細く険しい泥道の道端で食堂を開いたのです」(同)

 この道を通る際には、崖から落ちる馬が続出、約3000頭が死んだという。

「彼は、死んだ馬を回収、解体し、料理してお客に出していました」(同)

■1日3000食

 その後、木造2階建てのホテルをオープンさせ、大儲けしたという。

「中に入っていたレストランでは、サーモンや牡蠣、アヒルや白鳥、山羊、リス、ウサギといった様々な肉や新鮮なフルーツを提供したそうです。炭鉱労働者には大好評で、多い時で1日3000食も出たとか。もっとも、一番の稼ぎは、酒と売春による儲けでした」(同)

 彼はカナダで財産を築き、1901年に一旦、ドイツへ帰国。自宅近くに住む女性と知り合い、翌年結婚し、ニューヨークへ戻った。

「ところが、妻がホームシックになり、再びドイツへ戻り永住を決意した。しかし、16歳で米国に渡ったことが“ドイツでの徴兵逃れのための移住”と疑われ、永住は認められなかった。で、05年にニューヨークに渡ったのです」(同)

 もし、ドイツで永住していれば、トランプ大統領は誕生しなかったというわけだ。その後、本格的に不動産業を始めたものの、18年5月、49歳で病死した。妻とフリードリヒの長男、つまりトランプの父親が不動産業を継いだという。

「トランプにとっては、自分のルーツが移民だということは関係ありません」

 と、早稲田大学客員教授の春名幹男氏(元共同通信ワシントン支局長)。

「移民に仕事を奪われている白人のブルーカラー層の票目当てで、移民排斥を訴えたのです。とはいえ、米国人の多くが移民に反対しているかといえば、そうではない。実際は、メキシコとの国境に壁を作ることもできないでしょう。結局はトランプに票を入れたのに、一向に生活が改善されないなどの不満が出て、色々と問題が生じてくるはずです」

 祖父は、泉下で孫の政策をどう考えているのやら。

ワイド特集「1度目は悲劇 2度目は喜劇」より

週刊新潮 2016年12月8日号掲載