“安倍1強”を許すイエスマンだらけの自民党 総裁任期3期9年に

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安倍首相

 本来、政治とは権力闘争の場。ところが、いまの自民党からは、“安倍1強”を突き崩そうとする気概すら感じられない。挙げ句、総裁任期の延長を、あっさりと無風で決めてしまう体たらく。あまりに、情けないではないか。

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 10月26日、自民党は党・政治制度改革実行本部で、総裁任期を“連続2期6年”から“連続3期9年”に延長を決定。来春の党大会で党則を変更することになった。

「そもそも、総裁任期の延長を降って湧いたかのように言い出したのは、当時総務会長だった二階俊博幹事長でした」

 と解説するのは、政治部デスクである。

「7月16日、谷垣禎一前幹事長がサイクリング中に転倒し、政界復帰が難しくなった。すると、その3日後の総務会長会見で、“必要があると大方が認めれば、延長も考慮に入れてもいいのではないか”と発言したのです。それは単に、幹事長ポストを手に入れるべく、安倍総理に媚(こ)びを売りたかったからだと見られていた。でも、話はトントン拍子に進み、わずか3回の会合を開いただけで総裁任期の延長は決まってしまいました」

 安倍総理は再登板以来、衆参2回の国政選挙に圧勝し、支持率も一貫して50%前後をキープ。そのため、過去に前例のない“安倍1強”という体制を築いたのである。

「自民党内では、長期の政権運営が見込まれる安倍総理に冷や飯を食わされないようにするため、ゴマすり政治家ばかりが増えています。ポスト安倍を狙う石破茂前地方創生相や岸田文雄外相も、最初こそ総裁任期の延長に異を唱えましたが、結局、反発を恐れてダンマリを決め込んだ。それに、2回生以下の安倍チルドレンは高い支持率のおかげで楽々当選してきたため、安倍総理を担いでおけば選挙は安泰だという安易な考えを持っているのです」(同)

 要するに、誰も彼もが安倍総理のイエスマンに成り果て、総裁任期の延長に反対しなかったというわけなのである。

■権力闘争で活性化

 党則の変更によって、もし安倍総理が18年9月の党総裁選で3選を果たせば、21年9月までその座に居座り続ける。東京オリンピックも、ホスト役として迎えることになるのは言うまでもない。

 しかし、媚び諂(へつら)うことを競い合う“安倍1強”体制に弊害がないわけがない。

 自民党のある代議士によれば、

「昔は、“三角大福中”や“安竹宮”など、次の総理の座を争う政治家の名前の一文字を取って権力闘争の様を表した。党は、権力闘争によって活性化していくものです。過去の例を見ると、長期政権の次の政権は安定しない。5年にわたった小泉政権の後は1年ごとに安倍、福田、麻生と総理が代わり、最後は下野に追い込まれました。安倍総理が明治以来の最長の政権を担えば、ポスト安倍がどこにもいないという恐ろしい状況になるかもしれません」

 それにしても、なぜ、自民党の国会議員は、安倍総理にこれほど従順になってしまっているのか。

 政治ジャーナリストの山村明義氏曰く、

「それは偏(ひとえ)に自民党が7年前に下野したからです。野党として過ごした3年3カ月のトラウマをいまも拭い切れずにいる。そのため、権力闘争に現(うつつ)を抜かすような真似はせず、全員が安倍総理に従うような総主流派体制になってしまった。そして、如何にしたら下野しないか、自分が選挙に勝てるかしか考えていないのです」

“わが身かわいさ”では、政治家の資格は持ち得ないのだ。

特大ワイド「ふりむけば百鬼夜行」より

週刊新潮 2016年11月10日神帰月増大号掲載

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