金正日の料理人、北朝鮮でラーメン屋を開業 あの名店のレシピ教わる

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 北朝鮮はいま国民総動員運動「200日戦闘」のまっただ中。「戦闘開始」から約100日の9月には世界中から批難を浴びながら5度目の核実験実施を誇り、首都平壌で初の回転寿司店をオープン。店は連日盛況、“赫々たる戦果”を挙げているそうだが、あの人が新たな「戦端」を開くという。

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ぞっこんの店で麺をすする藤本健二氏

 農作業すら“田植え戦闘”と呼ぶ北朝鮮。金正恩・軍最高司令官の号令に馳せ参じたのは誰あろう、「金正日の料理人」こと藤本健二氏だ。十数年間、故総書記の専属料理人を務め、金正恩を幼少期から知る藤本氏の長年の念願は北朝鮮でのラーメン店開業だった。

「彼は最高級ホテル『高麗ホテル』の地下に店を持ち、ラーメンを出すのが夢だと公言していました。しかも、あの名店の味を再現したいとも言っていました」

 とは、藤本氏をよく知る人物。

「北朝鮮の党幹部が日本を訪れた際、築地のその店のラーメンを食べて感動。聞きつけた金正恩が“ぜひ食べてみたい”という話になったそうですが、その店というのが藤本さんの数十年来の馴染み。大将に頼み込んで“レシピ”を教わったというのです」(同)

 寿司職人だった藤本氏、若い頃から築地に来るたびこの店の味を堪能、惚れ込んでいたという。

「数年前の朝方、一緒に食べたのですが、“この味なんだよ! 旨い!”と感激していましたね」(同)

 チャーシューメンかと見まごう量のチャーシュー、その下には正統派の醤油味、透明なスープにたゆたうはストレートな細麺。朝の5時から築地場外で立ったまますする至福の一杯といえば……そうあの店である。

■店主は語る

 くだんの「井上」店主の松岡勝治氏(72)は言う。

「藤本さんは昔からよく食べに来てくれてましたよ。確かに“平壌でラーメン屋を開くから作り方を教えて下さい”って言ってきたな。だから紙1枚にまとめて書いてあげたんだ。お金なんてもらってないよ」

 8月中旬、藤本氏が店に姿を現したときには“これから向こうに行く”と言っていたという。

「ただ、“レシピ”があったところで味を再現できるとは限らないよ。藤本さんは料理人だから、上手に作るだろうけどさ。素材もうちはいい物を使ってる。豚骨はすべてゲンコツ、脚の関節部分で、いい出汁が取れるんだ。これをボイルして、鶏ガラちょっとと昆布と一緒に寸胴で煮込む。スープを150~200杯取ったら寸胴の中身はすべて入れ替え。これを1日3、4回繰り返すってわけ。この入れ替えのタイミングや、煮込みはじめと終わりで味が変わらないようにするのが難しいけど、経験だね」(同)

 味は醤油と味の素少々だけ。“これでお兄ちゃんもラーメン屋、できるんじゃないの?”と記者に笑う店主が出す一杯は、“化調だろうがなんだろうが旨いものは旨い”と客に言わしめ、店に行列は絶えない。

 ある事情通が言う。

「藤本さんがお店を出すのは、金正恩お気に入りの新ハイテク街〈未来科学者通り〉で、朝鮮労働党の創立記念日である10月10日とも言われています」

 一番最初に金正恩最高司令官に食べてもらいたいと語っていた藤本氏。“ラーメン戦闘”の戦果やいかに。

「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書」より

週刊新潮 2016年10月13日神無月増大号掲載

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