“18歳に500ユーロ支給” イタリア首相の狙い

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「テロとの戦い」で真に有効なのは何か。

「文化である」と断じた人物がいる。イタリアのマッテオ・レンツィ首相(41)だ。

 伊憲政史上最年少の39歳で首相に就任。昨年11月のパリ同時多発テロ直後に「テロには文化で応じる」「安全対策に1ユーロ拠出するなら、文化振興にも同額を用意する」と宣言、10億ユーロ(約1150億円)もの新予算をぶち上げてみせたが、その一環として9月15日からある試みが行われる。

「博物館や映画館、コンサートや文化イベントの支払いに500ユーロ(約5万7000円)分が使えるアプリの提供が始まります。対象は今年18歳を迎える57万5000人。3億ユーロ(約350億円)に上る総額に批判の声もありますが、若者は大歓迎です」(現地記者)

 有効期限は2017年末、正式な滞在許可を受けている外国人も恩恵に与れる。

 若者の過激思想に文化予算で対抗する試みとしては、フランスがパリ市内の全博物館・美術館の学生への無料開放などを行っているが、ここまで大がかりな例はない。貧困層や過激化傾向の強い若者にカウンセリングを行う英国のプログラムはむしろ、“テロ容疑者を作りだし、監視する制度だ”との批判も噴出。レンツィ首相は「テロの温床は無知と貧困」とする通説に見事、応えているように見える。

「若者の映画や美術館離れの解消に効果があるかもしれませんが、現地で囁かれているのはむしろ投票対策」

 とはイタリア在住のライター、小林真子氏だ。

「レンツィ首相は10月に政権の信を問う国民投票を控えているんです。しかもイタリアで投票権が得られるのは18歳。タイミングのよさを揶揄されています」

 権謀術数の本家マキャベリは「結果が良ければ手段は常に正当化される」と説いたが、首相を待つ命運は。

週刊新潮 2016年9月15日号掲載

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