6000人拘束「トルコ」クーデタ、“大統領の自作自演”説も

国際週刊新潮 2016年7月28日号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

 7月15日夜10時半、トルコの最大都市イスタンブール。ボスポラス海峡に架かる2つの大橋を軍車輌が封鎖した。同じ頃、国営テレビのアナウンサーが青ざめながら“平和評議会”を名乗る組織の声明を読み上げた。曰く、「軍が国の全権を掌握した」。クーデタ発生だ。

市民は「エルドアンは永遠」と賛美(写真・ゼータイメージ)

「このときエルドアン大統領はトルコ南西部の保養地で静養中。スマートフォンの画面を通じて“国民の力より強い力はない。通りに出よう”と呼びかけ、呼応した大統領支持派を中心に市民が首都アンカラやイスタンブールの街に飛び出しました。戦車に石を投げたり兵士に“帰れ”と連呼したり、ボスポラス大橋にも数千人の市民が押し寄せ、兵士たちは投降、クーデタは見る間に収束し、市民は気勢を上げました。エルドアンは今や英雄扱いですよ」(現地記者)

市民にむけスピーチをするエルドアン大統領(写真・ゼータイメージ)

 全土でもおよそ12時間でクーデタは鎮圧、エルドアンは「あらゆるレベルでウイルス浄化作戦を行う」として、軍人ばかりでなく、警察官、検察官、裁判官など約6000人を拘束、首謀者として米国亡命中のギュレン師を名指しした。

 現代イスラム研究センターの宮田律氏は言う。

「個人崇拝的な穏健派イスラム組織を率いるギュレン師と、エルドアンはかつて手を結んでいました。が、大統領の強権化が進む中で訣別。今回、片っ端から拘束されているのはこのギュレン派と見なされた人々です。ギュレン派は司法、行政分野に数多くの人材を送り込んでいましたが、これで一掃されるでしょう」

 政教分離を国是とするトルコで年々、イスラム教重視に傾斜するエルドアン大統領は、一方で、大統領権限を大幅に強化する新憲法制定を悲願とする。今年5月には難色を示す首相を任期途中で事実上更迭。独裁色を強め、今回のクーデタではさらに、政治的に敵対する一派を徹底的に排除する格好の機会を得たわけだ。

「そのため、一部ではクーデタはエルドアンの“自作自演”だという説が囁かれています。大統領宮殿が無傷だったり、拘束すべき大統領が不在のタイミングでクーデタが起きたりと不可解な点が多い」(同)

 邪魔者が減ったということだけは、よくわかる。