催眠術師も関与 英国離脱派の宣伝デマ 混乱続くEU離脱の疑問(2)

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「デモクラシー」ならぬ「デマクラシー」。

 そう国民投票を切って捨てるのは、北海道大学法学部の遠藤乾(けん)教授(国際政治)。離脱派が投票前に述べていた主張は、事実と異なるものばかりだったからだ。

「酷かったのは、イギリスのEUへの拠出金を『週3億5000万ポンド(約480億円)』とし、脱退してそれを国民保健サービスの財源に回そうと主張したことです。しかし一方で、イギリスはEUから還付金なども受け取っていますから、差し引きしないと離脱で生じる財源額にはならない。わざと実際よりも多い数字を出し、期待感を煽ったのです」

 還付金などを引けば、残りは3分の1強。後に離脱派も認めた「ウソ」だった。

「他にも“欧州常備軍ができ、戦争に巻き込まれる”“トルコがEUに加盟し、大量の移民が押し寄せる”という主張もありましたが、いずれも確定した話ではない。それを大袈裟に述べ、残留への拒否反応を植え付けました」(同)

 また、離脱派には、名高い催眠術師が関与していたことも明らかになっている。

「彼は最右派・独立党のアドバイザーとしてキャンペーンビデオの制作に携わり、移民の犯罪を印象づける演出など、それを大衆誘導的なものに作り上げました」(在英ジャーナリスト)

 投票後、離脱派は、キャンペーン中の発言を取り上げた動画を次々削除。「証拠隠滅」を図っているという。

「理性と事実を重んじる英国自由主義の伝統は崩れ去ってしまった」(遠藤教授)

 これでは、再投票を望む英国民の気持ちもわからなくはないのである。

「特集 まだまだ大混乱! 英国『EU離脱』7つの疑問」より

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

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