JAL、業績好転で緩むタガ…副操縦士が酒乱逮捕、コックピットで記念撮影

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

 一度は“墜落”した赤い鶴が、再び大空を飛翔している。2010年に経営破綻した日本航空(JAL)。初のパイロット出身の社長である植木義晴氏(63)のおおらかな性格も相まって、社内には明るい雰囲気が戻りつつあるという。そんななかで、前代未聞の事件が起きたのだ。

「泥酔した男が、路上で男性を殴っている」

 石川県警にこんな内容の110番通報が入ったのは、6月27日の午後10時10分過ぎのこと。現場に駆けつけた金沢中署の警官が職務質問をすると、泥酔男が警官の顎を平手で殴ったので現行犯逮捕された。逮捕されたのはJALの副操縦士・巽創一(42)で、路上で殴られたのは上司の機長だった。巽副操縦士の逮捕で、代行要員も確保できず、翌日7時35分の小松空港発羽田便は欠航に追い込まれた。これを知ったJALの機長OBは憤りを隠さない。

「社内には、フライト12時間前の飲酒を禁じるルールがあります。上司の機長も酔っていたので、2人とも社内ルールを無視していたことになる。逮捕された副操縦士は、6年前にも米国サンフランシスコのホテルで酒が原因で警察沙汰になった“前科”がある。タガが緩んでいるとしか思えません」

 JALでは、昨年6月にも男性機長が女性の客室乗務員と飛行中のコックピットで記念写真を撮るなど、パイロットの不祥事が相次いでいる。JALの地上職員がこう嘆くのだ。

「経営破綻後、大規模なリストラを断行する一方でパイロットの給与も大幅にカットされた。それが来春、平均年収が“ライバル”全日空並みの約2000万円にまで引き上げられる。それで“浮かれ気分”のパイロットが少なからずいるのは事実ですから……」

■国の過剰支援

 JALパイロットの年収引き上げは、世界的な人員不足もあるが、最大の理由は業績の好転だ。2016年3月期決算を見ると、売上げは全日空に劣っているものの、当期利益約1744億円は2・2倍に上る。この“V字回復”にはウラがある。航空業界担当のアナリストの分析では、

「業績好調なのは、他国でも珍しい“過剰支援”の恩恵に浴しているだけです。破綻当時の民主党政権は、JAL救済のために3500億円もの公的資金を注入したことに加えて、金融機関に5215億円の債権放棄を迫りました」

 結果、JALは2018年までの9年間で4000億円以上の法人税が優遇されるほか、有利子負債も少ない、“超優良企業”に変身したのだ。

「この6年間、JALは国内外の路線をいくつか廃止しています。その中身を見ると、他社との競合路線ではなく単独路線ばかり。救済の目的は“国民の足を守るため”だったはずですが、明らかに矛盾している。全日空や海外航空会社が、“破綻したJALだけが優遇されるのは、アンフェアだ”と主張するのも理解できます」(同)

 さらに、経済誌の航空担当記者によれば、

「2012年8月10日、国交省はJALに対して新規投資を抑制する行政指導をしています。その文書が通称“8・10ペーパー”。ですが、その規制が来年春で失効する。他社にしてみれば、“自由に投資をする前に、法人税をまともに支払うのが先だろう”と言いたくもなるでしょう」

 そもそもJAL破綻の原因は放漫経営だった。おごり高ぶっていると、また同じ道を辿るのではないか。

週刊新潮 2016年7月14日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。