金欠ストリッパーの部屋から発掘された400万円!〈清掃人は見た! あなたの近所の隠れた「汚部屋」(4)〉

社会週刊新潮 2016年5月5・12日ゴールデンウイーク特大号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

 ノンフィクション・ライターの福田ますみさんが清掃業者の証言から描く、「汚部屋(おべや)」の実態。これまで、ゴキブリが多数発生した部屋や、4トントラックいっぱいのゴミをため込んだ女教師のケースを紹介してきた。

 ***

清掃業者の証言から描く、「汚部屋(おべや)」の実態

 目をそむけたくなるようなゴミの山から、思わぬお宝が発見されることもある。ゴミ屋敷清掃と遺品整理の代行業「孫の手」佐々木久史社長の妻で、自身も清掃作業に加わる薫さんがこんな話をしてくれた。

「昼は普通にお勤めしていて、夜はストリッパーをしていた女の子がいたんです。“部屋を片付けてもらいたいけど20万円ぐらいしかない”と言うので、とりあえず現場を見に行き、電灯の壊れた部屋の中を懐中電灯で照らしたら、ゴミの山のあちこちにお札が見える」

 食べ残したカップラーメンの汁の中に1万円札が数枚、ジャブンと浸かっている。トイレの洗面台にやはり万札が何枚も張り付いている。かき集めたらなんと400万円ほどあった。薫さんは銀行に預けることを勧めたが、なにしろお札がごわごわでATMが受け付けない。

「そこで、銀行まで付き添ったんです。窓口の人は汚い札を見て、ざるを出して数えていましたよ」

 ちなみに薫さんは、超がつくほどのきれい好き。それでこの仕事をしていてつらくないかと尋ねると、

「全然。ゴミだらけの部屋がみるみるきれいになっていくのを見ると、むしろ気持ちいいですよ」

 夫の佐々木社長も言う。

「ゴミ部屋っていうのは、つまりは人間ドラマなんだよ。次はどんな物語が待っているかと思うとワクワクするね」

 今や、マンション1棟にゴミ部屋は1割程度あるだろうと、彼ら代行業者は口を揃える。

「都営住宅なんて、外からベランダの様子やサッシの閉まり具合を見ただけで、ああここはゴミ部屋だなってわかりますよ。やっぱり1割ぐらいはあると思う」(横浜市の代行業者「アクト片付けセンター」の代表取締役・木下修さん)

 迷惑千万な代物には違いない。だが、各々が個性的に作り上げたゴミの地層には、悲喜こもごもの人間模様がかいま見え、それはそれで、芭蕉の句同様、趣が……なんてことにはならないか。

 ***

(1)はこちら
(2)はこちら
(3)はこちら

「特別読物 食事中の閲覧注意!『ゴミ屋敷』清掃人は見た! あなたの近所の隠れた『汚部屋』――福田ますみ(ノンフィクション・ライター)」より

福田ますみ(ふくだ・ますみ)
1956年、横浜市生まれ。立教大学社会学部卒業後、専門誌、編集プロダクション勤務を経てフリーに。2007年、『でっちあげ』で新潮ドキュメント賞受賞。今年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞受賞作を書籍化した近刊『モンスターマザー』も話題となっている。