緊急寄稿 トランプ大統領誕生で『カエルの楽園』が予言の書になる日――百田尚樹(作家)

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マスコミ、野党はどうする

 話が少し脱線しましたが、もしトランプ氏の公約通りの要求が行なわれれば、これはかつての黒船の時と同じく、日本人に「国防」の問題を突きつけることになると思います。

 米軍が日本から去れば、中国は間違いなく尖閣を奪いに来ます。これは過去40年の中国のやり方を見れば明らかです。彼らは米軍の支配力が消えた途端に地域の土地や島を奪います。西沙諸島も南沙諸島もそうやって奪ってきました。

『カエルの楽園』では、スチームボートが去ったと聞くと、デイブレイクを始め元老の多くが快哉を叫びます。そして彼らの意見に扇動された多くのカエルたちも口々によかったと言います。実際にはかなりの数のカエルたちが不安に思うのですが、それを口にするとデイブレイクに睨まれ、はっきりと口にできるカエルはほとんどいませんでした。そして物語は悲劇に向かって進むのですが、ここではそこまでの話はしません。

 私はトランプ氏が大統領になって実際に公約を突きつけてきた時、はたして日本の政治家、ジャーナリスト、文化人たちは、どういう意見を言うだろうかと注目しています。

 私の想像では、共産党と社民党は「米軍が出て行ってくれるのは大いに結構。日本は1円の金も払う必要はなし」と言うような気がします。それは長年の共産党の主張でもあるからです。でもこれを言うことで、党の支援者以外の人からは永久に支持を失うでしょう。彼らもそれがわかっていながら、ここで方向転換すれば元からの支持層も失ってしまうので、突っ走ることになるでしょう。彼らはもともと日本のことや国民のことなど何も考えていなくて、一番大事なのはイデオロギーなのですから。

 ただ、民進党がどう言うかはちょっとわかりません。彼らの中には、現実的な考え方が多少はできる人もいるでしょうし、そうした人は在日米軍の撤退によって東アジアの勢力均衡が一気に崩れてしまうということはわかっているはずです。だからといって、政府に「金を使ってでも米軍の駐留をお願いしろ」とはなかなか言えません。それを言えば、「中国の脅威」と「日本の安全は米軍のお蔭である」ということを認めることになるからです。これはそれまでの民進党の意見とは相当に食い違います。その矛盾を有権者に指摘されるのはかなり痛いところです。

 では彼らはどうするか。これは賭けてもいいですが、彼らは自分たちの意見は何一つ言いません。ただ、与党の意見に対して、その欠点を見つけて、それを指摘することでしょう。

 たとえば、政府が「お金を払う」と言えば、「そんな弱腰でいいのか」とか「アメリカ人を傭兵代わりにするのか」とか言い出すでしょう。あるいは「そんな金があるなら、もっと使うべきものがあるだろう」という的外れな意見も出るでしょう。そして「アメリカは横暴だ」というアメリカ批判も出るでしょう。要するにとにかく何でも反対するわけです。しかし「こうすればいい」という建設的な意見は絶対に出しません。

 おそらくサヨク系の新聞や文化人たちの意見もおおむねそうなるでしょう。彼らは政府が出す案に対して、重箱の隅をつつくような意見ばかりをしたり顔で語るでしょうが、「じゃあ、どうすればいいのか?」と問われれば、「難しい問題だけに簡単に結論を出せるものではない」というようないつものセリフで逃げることでしょう。今テレビに出ている進歩的文化人たちは必ずそう言います。これは私の「予言」です。

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