【五輪招致委不正送金疑惑】2億3000万円で買った“ドン”の歓心…今年初めに言及も注目されず

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 1350万の人口を誇る国際都市――ということになっている東京都。だが、我が国の首都であると同時に、世界の経済拠点の一つでもあるTOKYOにて、新たに2020年の五輪招致にまつわる疑惑が持ち上がっていることは周知の通りである。目下、東京は「国際都市」から「黒色都市」への転落の危機を迎えようとしている……。

 その「疑惑のダイナマイト」の導火線に火を点けたのは英国だった。5月11日、英紙「ガーディアン」が、

〈東京五輪 秘密の口座に130万ユーロの振り込みで2020年のゲーム(五輪)に疑問符〉

 と題し、東京五輪招致に際して、招致委員会から、五輪開催都市決定に影響力を持つ人物の関係先に多額の金が振り込まれ、それをフランスの検察が捜査していると報じたのである。実際、その翌日、フランスの当局は、

〈「東京2020オリンピック誘致」という名目で日本の銀行に開設された口座からシンガポール所在の「ブラック・タイディングス」社(以下ブラック社)に向けてなされた、総額280万シンガポールドル相当の資金移動を察知した〉

 とした上で、

〈2020年オリンピック開催地の指名過程において汚職及び資金清浄が行われたか否かを確かめる〉

 との声明を発表したのだ。

■公営住宅の“コンサル会社”

 疑惑の概要を整理しておくと、20年の五輪が東京で開催されることが決定したのは13年9月。その前後に、招致委はコンサルタント会社のブラック社に計約2億3000万円を振り込んでいた。しかし、

「ブラック社が登記されていたのは老朽化が激しく、取り壊しが決まっているシンガポールの公営住宅で、廊下には買い物用の袋が雑多に置かれているなど、生活感丸出しの、とてもオフィスとは思えない一室でした。14年7月に、会社は閉鎖されています」(現地関係者)

 要は、ペーパーカンパニーだった可能性が極めて高い会社に2億円超が振り込まれていたのである。

 招致委は、五輪招致のロビー活動等を行ってもらうための正当な支払いだったと主張しているが、「庶民的」な公営住宅にあった会社が、世界最大のスポーツイベントである五輪のロビー活動を充分にこなせたとは思い難い。そこで、次のように疑われているのだ。

「ブラック社の代表の親友であるセネガル人のパパマッサタ・ディアクは、当時、IOC委員で五輪開催地を決める投票権を有していたラミン・ディアク国際陸連会長を父に持つ人物です。つまり、ラミン・ディアクや、彼が影響力を行使できる人の票を買うために、招致委はブラック社を通じてディアク側に金を流したと見られている。事実、パパマッサタが、13年9月頃、パリで高級時計など2000万円もの買い物をしていたことを、フランス検察は把握しています。こうしたことから、ブラック社をトンネルにした贈収賄だった可能性があると、捜査のメスが入ったわけです」(招致委関係者)

■ドンの歓心

 さらに、スポーツ紙のJOC(日本オリンピック委員会)担当記者は、

「実は今年1月の時点で、『ダイナマイト』は仕掛けられていました」

 と、遡って解説する。

「昨年、ロシアの陸上界で組織ぐるみのドーピング隠蔽が行われていたことが明るみに出た。これを受け、WADA(世界ドーピング防止機構)は独立委員会を設置し、この問題の全容解明に乗り出しました。その調査結果の第2回報告書が1月14日に公表されたんですが……」

 そこには、ほとんど注目されなかったもののこう書かれていた。

〈(ドーピング隠蔽問題への関与で捜査されている)ラミン・ディアクの(パパマッサタとは別の)息子と何人かのトルコ人との会話の記録の中に、20年の五輪招致に言及している箇所がある。それによると、(日本と五輪招致を競っていた)トルコはダイヤモンドリーグ(国際陸連主催の最高峰リーグ戦)、または国際陸連に400万ドルから500万ドルのスポンサー料を支払わなかったため、ラミン・ディアクの支持を失った。日本はそのお金を支払い、20年の五輪開催地が東京に決まった〉

 とどのつまり、国際陸連のドンだったラミン・ディアク氏の「歓心」を買えたか否かが、トルコと日本の命運を分けたことになる。これを世間では買収と呼ぶ――。

「特集 賄賂? 裏金? 資金洗浄? 妙な会社に2億を払った『五輪招致委員会』と怪しい電通」より

週刊新潮 2016年5月26日号掲載

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