「新ゲーム機」の開発費捻出のため? 任天堂の「マリナーズ」売却

ビジネス 企業・業界 週刊新潮 2016年5月19日菖蒲月増大号掲載

  • ブックマーク

 ニンテンドーDSやWiiなど革新的なゲーム機を次々に発売し、世界中のファンを魅了してきた任天堂が、ここ数年ほどは苦境から抜け出せずにいる。大手紙経済部記者が言う。

「4月27日に開かれた決算説明会によると、16年3月期の売上高は5044億円で7年連続の減収。ピークは09年3月期で、売上高は1兆8386億円でした」

 なぜここまで落ち込んでしまったのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が解説する。

「2011年頃からアジアでiPhoneが爆発的に普及して以降、ゲームはスマホでプレイするのが主流になりましたが、任天堂はゲーム機に拘り、昨年までスマホに参戦してこなかった。このロスが大きいですね」

 決算説明会では、新型ゲーム機「NX」を来年3月に発売することも同時に公表されたが、その翌日にはもうひとつ、大きな発表が待ち受けていた。

「92年から保有していた米大リーグ球団のシアトル・マリナーズの経営権を処分すると発表しました。すわ、不足したNXの開発費を捻出するための売却か、という憶測が飛び交いました」(前出の経済部記者)

 経営はそこまで逼迫しているのか。任天堂の広報担当者に訊ねると、

「もともと球団経営は商売として成り立っておらず、社会貢献に近いものでした。売却は1年ほど前から検討しており、発表日が決算説明会と近くなってしまっただけ。うちはキャッシュリッチで、開発費も問題ありません」

 ポケモンの孝行も続いているのだろう。さて、新型機はV字回復の鍵となるのか。経済アナリストの森永卓郎氏によると、

「儲けが出ないから球団経営から退くというのは、普通の企業の発想です。任天堂は、奇抜な発想で商品を開発できるのが強みでしたが、岩田聡前社長亡き後、そうした社風が失われつつあるのかもしれません。NXが既視感のある無難なゲーム機なら大ヒットは望めず、先細りしていくでしょう」

 ゲームオーバーに至らないことを祈りましょう。