伊勢原で遺体発見 「死刑囚の告白」を隠蔽しようとしていた警視庁

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 20年もの呪縛を解かれ、地中から掘り起こされた亡骸は何を訴えかけるのか。「死刑囚の告白」を基に警視庁は被害者の遺体を発見した。当局は沸き返り、メディアも大きく報じたが、その内幕たるや……。警視庁“職責放棄”の舞台裏を明かす。

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 最初に土中から覗いたのは、ぼろぼろになった布きれだった。周りの土を掘り起こしていくと、細長い布の中には硬い棒状の物質が包まれている。布はズボンの生地で、中にくるまれていたのは、膝を立て、くの字の形に折り曲げられた足の骨だった。肉が一片も残っていない大腿骨、膝の皿、脛骨である。左足側だけ、素材が朽ちた靴を履いている。さらに周囲の土を慎重に取り除いていくと、やがて鑑識課員らの前に、丸みを帯びた頭蓋骨の側頭部が現れた。20年もの間、地中の闇に埋もれていた人骨一式が発掘され、ブナの樹々の合間から差す木漏れ日に照らし出された。

 確定死刑囚が獄中から、警察も把握していなかった複数の殺人を告白した前代未聞の事件が急展開を迎えた。4月19日、警視庁と神奈川県警は、死刑囚の指示で遺体を遺棄した男を、伊勢原市大山の山中に立ち会わせ、捜索を実施。証言通り、林道脇の雑木林の斜面から被害者の白骨化した遺体を発見したのである。前橋スナック銃乱射事件(2003年発生)の首謀者として、一昨年3月、最高裁で死刑が確定した、指定暴力団、住吉会の幹部、矢野治(67)の告白が真実であることが証明された瞬間だった。

「哀れなもので、遺体は、強い風雨で土砂ごと流されないようにするため、重石として大きな石を胸に抱かされていた。骨の間のあちこちから木の根が生え出していて、改めて時の経過を感じました」(捜査関係者)

 本誌(「週刊新潮」)はいち早くこの「死刑囚の告白」を探知し、今年2月以降、その全貌を報じてきた。今一度、その内容を振り返っておきたい。

「私は、発覚している件以外にもたくさん人を殺めています。全ての垢を落としてから、刑に臨みたい」

 死刑確定後、矢野は弁護士との面会でこう心情を吐露していた。ほどなく彼はこの言葉を実践すべく、警視庁に2件の殺人を告白する手紙を送ったのだ。

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