東大合格実績に疑義あり「AO義塾」24歳経営者と安倍家の関係

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 少子化の折、大学は学生の確保に躍起である。国立大とて事情は同じで、今年はついに東大でも推薦入試がスタートした。その“初陣”で、一躍名を馳せた進学塾がある。経営者は安倍首相の遠縁というのだが、肝心の実績をめぐり、受験業界から疑問の声が――。

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 東大の推薦入試は、各高校から選ばれた男女1人ずつの受験生が11月中に書類などの一次選考を受け、翌月には通過者のみが面接など二次選考。センター試験の成績とあわせて評価し、2月10日に合格者が発表された。

「初年度は173名が出願し、一次通過が149名。そして最終的に77名が合格したのですが、今回、脚光を浴びたのは何と言ってもAO入試の専門予備校『AO義塾』。77人中14名がその出身者だということで、ワイドショーや雑誌で『驚異の合格率』などと大々的に取り上げられたのです」(大手予備校関係者)

 同塾は、自らAO入試で慶大に合格した斎木陽平塾長(24)が、在学中の10年に設立。そのホームページには、彼が受験時に慶大に提出した『自己推薦書』がアップされ、安倍首相とのツーショットも掲げられている。また13年には、

「若者の政治参加を目指す一般社団法人『リビジョン』を設立。これまで18歳選挙権の実現などを訴えて活動してきました」(知人)

■「政治家のつもり」

 が、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、

「AO義塾の合格実績には、大いに疑問があります」

 と、次のように指摘する。

「彼らは27人の受講生のうち14人が合格したとしていますが、この中には、一次選考が終わってから声をかけ、無料の直前対策講習を受けさせたケースも含まれています。これは、学習塾の業界団体である『公益社団法人全国学習塾協会』が定めた自主基準から逸脱しています」

 その実施細則には「合格実績」の項目として、〈受験直前の6カ月間の内、継続的に3カ月を超える期間在籍〉あるいは〈受験直前に集中講義等を受講し、時間数が50時間を超える場合〉に塾生徒と認められ、〈受講内容は有料でなければならない〉とある。

 当の斎木塾長に質すと、

「27人のうち、出願前から指導していたのは8人で、うち6人が合格。また一次通過後、二次選考前に加わったのが19人で、ここから8人が通りました。全員1泊2日の直前合宿プラス前日講座を受けており、さらに当初からの8人は1コマ2時間の講座を10〜20コマ受けています。初年度なので、東大のAO講座はすべて無料。学習塾協会のガイドラインは知りませんでした」

 そう認めるのだが、

「時間とともに、どれだけ濃密にやるかという“質”も重要だと思います。二次選考対策から参加した人も合格者数に含めているのは、我々が合格に貢献できたと考えているからです」

安倍首相と昭恵夫人

 まるで身も蓋もない。自らの受験時は大いに“貢献”したと思われる安倍首相とのつながりは、

「私の曾祖父は山口県の長門市長で、その女きょうだいが岸家に嫁ぎました。祖父は地元で医院を開業しており、安倍晋太郎さんの元後援会長。葬儀には総理も参列して下さいました」

 昭恵夫人についても、

「リビジョンが13年末に議員会館で『女子高校生未来会議』を開いた時に来て頂き、活動を応援して貰うようになりました。政治家にはバッジをつけていなくてもなれる。僕はもう、なった気持ちでいるのです」

 明日ありと思う心の仇桜

 教え子は咲いて、自らがくれぐれも散らぬよう─―。

「ワイド特集 さまざまの事おもひ出す桜かな」より

週刊新潮 2016年3月31日号掲載

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