“長寿の郷”京都府京丹後市で出会った「100歳のコーヒー党」と「91歳の現役営業マン」〈長寿村でやってみた「突撃! 隣の晩ごはん」(1)〉

食・暮らし週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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 長生きの秘訣とは何か。健康な生活を送るために、まず大事なのは日々の食生活に違いない。が、それだけなのか。生活習慣、ストレス解消法……。日本一長寿者が多い地域を訪ね、その暮らしからヒントを探る。名付けて週刊新潮版「突撃!長寿の村の晩ごはん」。

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 京都市内から、直線距離で約95キロ、電車で3時間余りかかる京都府の最北端。日本海に突き出た丹後半島にあるのが、京都府京丹後市だ。丹後ちりめん発祥地として知られる一方で、ここ最近は、「長寿の郷」としても名を轟かせている。

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 史上最長寿の男性として、ギネス世界記録に認定された木村次郎右衛門さんが、116歳で亡くなる2013年まで暮らした場所というだけではない。驚くことに市内人口約5万8000人のうち、なんと百寿者が78人(昨年9月時点)。10万人換算した場合の133人は、全国平均の48人と比べて約3倍になる。なぜ、京丹後市にこれほど長寿者が集中しているのか。

 今年4月から市と府立医科大が共同で、高齢者を1000人規模で調査し、謎の解明にあたるというが、そもそも、何を食べ、どんな生活を送っているのか。その暮らしにヒントがあるに違いない。かの名物番組ではないが、長寿のごはんに「突撃」することにしよう。

■“コーヒーを1日に5杯飲む”

 最初にご紹介するのは、海に面した京丹後市網野町。鳴き砂で有名な琴引浜など海水浴場が多数あり、夏場は多くの観光客が訪れる。しかし、冬場の今は、海岸に人の姿は見当たらない。

 御年100歳だが、今も毎日のように釣りを楽しむ志水富重さんを訪ねてみた。

「二等兵で軍隊に入り、4年後に戻ってきた時は軍曹になっていた。上官の命令には何でも服従だから、早く上級になろうと気張った」

 その軍隊仕込みのおかげで、今も日課はほぼ一定。

「朝は6時が基本。冬の今は7時半に起きます。それから朝ごはん。決まって、レーズンの入ったパンとコーヒー。私はコーヒーを1日に5杯は飲むんだ」

 妻のやよいさん(94)は、嫌いなコーヒーの代わりに牛乳を飲む。

「私が作っている頃から、ハイカラな料理はしませんでした。菜っ葉を茹でたり、大根やカボチャを炊いたり。塩分も気にしませんでした」

 とは、やよいさん。数年前に腰を痛めてからは、家事は富重さんが行っている。ちなみに今日の昼は、買ってきたコロッケ、大根を煮込んだおかずとごはん。

「昼食後、3時になると近所の海に様子を見に行く。風や波を見て、行けそうだったら釣りをし、ダメなら畑を見に行く。釣れるのはアジ、メジナ、黒鯛、時折、ヒラメかな。ウキの自作や仕掛けの研究が楽しい」

■志水富重さん(100)の夕食

 海へは原付バイクで行くという富重さん。その日の釣果や波、時刻などをメモとして記録し、釣れた魚は、食卓に上る。長生きの秘訣を聞いてみた。

「60歳で年金を貰い始めて失敗した。65歳まで待てば、支給額が多いけど、こんなに長生きすると思わなかったから。秘訣は、好きなことをやっていることかな。昔は食べるのに苦労して、百姓に平身低頭コメを分けてもらったほどだから、どんな粗食でも気にしない」

 毎晩6時に食べるという夕食を、見せていただいた。大根と人参、ほうれん草、舞茸を醤油で味付けしたというメインの煮物の他に、コロッケと昆布の佃煮、町内に住む親戚から貰ったこんにゃくと黒豆の煮しめ、そしてごはんが一膳。いずれも昼の余り物だという。

 煮物は、歯ごたえがなくなるほど煮込まれているが、塩気については極普通。日頃、コンビニ弁当ばかりで鍛えられた本誌記者の舌にも違和感がなかった。

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