住宅ローン“借換え”メリット・デメリットの「自己診断」

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 もはや過熱気味、と言ってもいいのが、“住宅ローン借換え”だ。

 日本経済新聞の集計によれば、三菱東京UFJ銀行を除く主要8銀行の、2月の借換え申込件数は、約2万8000件と、前年同月比2・5倍。1月と比較しても4倍になっている。日銀によるマイナス金利政策の導入が、住宅ローン金利を軒並み過去最低水準まで引き下げているからなのだ。

「3月借り入れの場合、固定金利10年型の最優遇金利は三井住友銀行、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行がともに0・80%。変動金利ですと、みずほと三菱東京が0・625%、三井住友が0・775%と、いずれも1%を切る水準にまで下がっています。35年固定金利の“フラット35”すら、最低金利で1・3%を下回る銀行も出ているのです」(経済ジャーナリスト)

 これだけの低金利なら、ローン返済中の身にとっては、すぐにでも借り換えて負担を減らしたいわけだが、

「金利の低さだけに目を奪われてはいけません」

 と、ファイナンシャルプランナーの東圭太氏は釘を刺す。というのも、

「ここまで金利が低下したということは、将来の金利上昇リスクを当然想定しなければならないからです。それに耐えられるかどうか、まず自己診断が必要です」

 フラット35のような全期間固定金利型のメリットは、その安定感、安心感にあるという。

「変動金利のローンは年に2回、金利の見直しがあります。もし今後金利が上昇すれば、当然ローン金利も上がる。それに過剰に敏感になってしまう人は、無理に借り換えなくてもいいと思います」(同)

 まずは自分が、家族が、将来の金利上昇に精神的に耐えられるかどうかを見極める必要があるのだ。

■繰り上げ返済も考えて

 金利上昇リスクは承知の上で借り換えたいなら、

「変動金利から固定金利への借換えは、目先の返済額を増やす行為ですから、勇気がいるでしょう。フラット35から固定金利型、固定から固定への借換えのほうが現実的です」(同)

 だが、借換えは新たなローン契約を結ぶことだから、保証料などの手数料がかかる。金利が安いと思って借り換えたのに、手数料の出費分でメリットが消えるということもありうる。

「残債×現在のローンと借り換えたいローンの金利差×返済残期間を2で割った金額と、借換え手数料を比較するのも、ひとつの方法です」(同)

 例えばフラット35を利用したローンの残債が3000万円、残期間が30年、金利2%だとする。借り換えたいのは固定金利10年型、金利0・80%。この条件で計算した答えは540万円で、手数料が70万~80万円なら相当おトク、ということになる。ただし、

「固定金利10年型だと、11年目以降は変動金利に切り替わります。この時に金利の上昇が大きいと、メリットが減ったり消えたりする可能性もある。だから最近は、金利上昇リスクに早めに対処するため、固定金利5年型を選ぶ人が増えています。また保証料などをサービスし、借換え手数料の一部を取らない銀行もあります」(同)

 自分のライフステージを考慮に入れることも重要だ。いつ大きな出費があるのか。

「子育て世代はなるべく長めの、金利の低いローンを使うことで、資金的な余裕を作り、それを教育資金などの貯蓄に充ててもいいと思います」(同)

 子供の教育資金が意外にかからなかったら、余剰金で繰り上げ返済する。

「繰り上げ返済は効果的な武器。タイミングを見計らって借換えと同時に行えば、総支払額の大幅な圧縮になります」(同)

 住宅ローン借換えの選択は金利だけではない。思い立ったら、まず自分の考え方や人生設計から見直していくことが大事なのである。

週刊新潮 2016年3月17日号掲載

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