マイナス金利や乱高下する相場に「外貨預金」は有効か

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 株式市場が乱高下しています。このような状況を見て、「一攫千金のチャンス」と身を乗り出すギャンブラー体質の方もいるとは思いますが、多くの人は「何となく怖い」と思うのではないでしょうか。

 では、株式投資ではなく、外貨預金はどうでしょうか。株ほどリスキーな感じはしませんし、何といっても「預金」なのですから、適切な時期に預ければ、きちんと増えるというイメージもあります。マイナス金利政策で日本の銀行の金利はこれまで以上に下がるとも言われている中では魅力的な商品にも見えます。

 しかし、その前に基礎的なことは知っておいたほうがいいでしょう。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、新著『10年後破綻する人、幸福な人』で、ギャンブラー体質ではない、ごく普通の人に向けて、経済の基礎知識を説明しています。同書から、外貨預金についての説明を引用してみましょう。

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経済ジャーナリストの荻原博子さん

■外貨預金をどう考えるか

 ここ数年で急速に円安が進んだことで、外貨預金に興味を持つ人も増えているようです。

 外貨預金は、名前でわかるように「預金」です。ですから、あらかじめ金利が決まっていて、お金を預けるとその金利がついて満期には戻ってきます。

 普通の預金だと、増えた利息から税金を引かれたものが手取りになります。課税額は、20%(国税15%+地方税5%)に、2037年まで復興特別所得税が0・315%上乗せされて20・315%。これを、増えた利息から引きますが、外貨預金も同じように増えた利息から20・315%の税金を引かれます。

 たとえば、100万円をドルの外貨預金で預けるとします。仮に、預ける時のレートが1ドル100円だったら、1万ドルの預金ということになります。この1万ドルの預金に対して年1%の利息がつく場合、1年後には、確実に1万100ドルになっています。ただし、増えた100ドルから20・315%の税金が引かれるので、利息は79・685ドルということになります。

 ここまでは普通の預金と同じですが、ちがうところは2つあります。ひとつは、預けるお金を外貨に換え、引き出す時には日本円に換えなくてはいけないので、必ず為替の影響を受けるということ。そして、出し入れに手数料がかかるということです。

■手数料に注意を

 たとえば、1ドル100円で預けて、引き出す時に円安が進んで1ドル120円になっていたら、預けた100万円は、利息込みで129万5622円に増えて戻ってきます。では逆に、1ドル80円の円高になっていたらどうでしょうか。円に換算すると86万3748円と、預けたお金よりも目減りしています。このように為替次第で「大儲け」「大損」の両方の可能性があるわけです。

「円安になったら引き出せばいいんでしょ」と思われる方もいるでしょう。その通りなのですが、円安になっても、必ずしも増えるとは限りません。なぜなら、手数料を引かれるからです。

 テレビのニュースで「為替相場は、1ドル100円です」と言う時、多くの銀行でお金を円からドルに預ける時のレート(TTSレート)は1ドル101円、ドルから円に戻す時のレート(TTBレート)は99円です。つまり、預けるときと引き出す時に、レートの中に手数料が含まれているということです。

 ごく簡単に言えば、100万円を預けてから引き出すと、約2万円の手数料がかかるということです。手数料は銀行によっても違うので、外貨預金をするなら、なるべく手数料が安い銀行でしたほうがいいでしょう。

■初心者はドルかユーロで

 そして外貨預金をするなら、初心者は、ドルかユーロがいいでしょう。

 銀行によっては、スイスのフラン、ブラジルのレアル、中国の人民元、南アフリカのランド、スウェーデンのクローネなど、様々な国の通貨でも預金できます。たとえば、南アフリカの通貨の南アフリカランドは、1年定期で2・5%から6%という高利回り。

 手数料も、往復で1ランドあたり30銭から80銭とあまり高くないので、一見すると投資向きに思えますが、金利が高いのには理由があります。南アフリカは、高度成長でインフレ気味。しかも、金やダイヤモンドといった資源の埋蔵量も多い国で、将来も有望視されていますが、社会的には不安定な要素も多い国です。内乱や暴動が起こる可能性も先進国より高く、そうしたことが起きると、いきなり通貨が暴落する可能性もあります。いわゆる、カントリーリスク(国としてのリスク)が大きいということです。

 しかも、内乱などがあっても、世界にはたくさんの国があって、毎日それぞれに事件が起きているので、日本ではニュースになりにくい。気がついたら、通貨が暴落してしまった後ということだってあり得ます。

 だとすれば、自分で調べなくても、毎回ニュースでレートがわかるドルかユーロがいいでしょう。

■アメリカの利上げが判断材料

 外貨預金は、円安になると儲けが出るので、先の為替を読むことがポイントとなります。

 これは、判断がなかなか難しいところですが、今後の大きな材料としては、アメリカの利上げがあります。リーマン・ショック後、アメリカは大規模な金融緩和を続けてきました。結果、アメリカ経済がかなり回復してきたので、FRBのイエレン議長は、金融緩和をやめ、金利を引き上げる方向で検討しています。

 金利を上げるということは、ドルに魅力が出てくるので、ドルが買われてドル高、つまり円安になりやすいということになります。ただし、世界にはいろいろな通貨があって、必ずしも円とドルだけの関係ではないので、ドルの独歩高になる可能性もあります。また、アメリカの利上げは、為替レートにかなり織り込まれているので、必ずしもドル高になるとは限りません。また、日銀の大規模な金融緩和も円安効果をうんできましたが、その特効薬もあまり効かなくなっているので、円高への巻き戻しがあるかもしれません。

 さらに、中国株の暴落など、世界経済を不安定にする要因がいろいろとあるので、この先、どんどんアメリカが金利を上げていくかといえば、それはわかりません。

 不確定要素はあまりにたくさんあるので、必ずしも円安になるとはいえませんが、その可能性はあるということです。

 ですから、外貨預金をするなら、損しても良い金額で生活に影響をきたさないようにしましょう。

デイリー新潮編集部

2016年2月19日掲載

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