インバウンド無情 皇族ゆかりの長崎「旗松亭」破綻

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 かつては貿易港として栄えた、長崎県平戸市。現在は“長崎の教会群とキリスト教関連遺産”としてユネスコ世界遺産の登録を目指す観光地でもある。

 国際観光ホテル「旗松亭」――客室数90室、屋上露天風呂やパノラマ展望大浴場を有する、平戸市内でもトップクラスのホテルなのだが、経営する有限会社旗松亭は1月29日、長崎地裁佐世保支部に民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。負債額は約22億円になるという。

「創業は1949年。69年の長崎国体開催の折り、平戸をご訪問される昭和天皇皇后両陛下のご宿泊先として、ホテルを開業。他にも今上両陛下や、オランダのアレクサンダー皇太子(現国王)も滞在されています。まさに平戸観光の中心的存在でした」(地元紙記者)

 増築や改装などの資金を金融機関からの融資に頼っていたが、景気低迷による客室稼働率の低下で資金繰りが悪化。2010年には借入金が債権回収会社に売却されてしまった。経営の効率化などさまざまな策を講じたが、昨年1月期の売上は約5億8200万円と、ピーク時の半分にダウン。宿泊客数回復の見込みが立たず、とうとう自主再建を断念したのだった。

「訪日観光客2000万人だ、と言いますが、これが観光後進国・日本の観光の現実です」

 と言うのは、ノンフィクション作家の桐山秀樹氏。

「大多数を占める中国や台湾、韓国からの観光客の“ゴールデンルート”は、やはり東京〜京都〜大阪で、最近ようやく北海道や金沢が増え始めた程度。“爆買い”以外の観光地では、ディズニーランドやUSJなどのアミューズメント型の施設が人気です。その意味では長崎県の場合、佐世保市のハウステンボスがダントツの人気なのです」

 実際、ハウステンボスは15年9月期決算で、経常利益100億円を達成するなど“ひとり勝ち”だ。

「昼も夜も楽しめる“統合リゾート”を目指さない限り、インバウンド需要の恩恵は受けられない。観光政策の問題です」(同)

 全国の観光地にとって、対岸の火事ではない。

週刊新潮 2016年2月11日号掲載

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