プーチン頼みの「国家基金」払底が近いロシア財政

国際週刊新潮 2016年1月28日号掲載

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 トルストイは『戦争と平和』で「忍耐と時、この二人の戦士ほど強いものはない」と言ったが、彼の国の庶民も「忍耐一時間は命百年分」と言い慣わすという。

 現在、経済制裁下で窮乏生活を送るロシア国民。我慢強い彼らだが、今後さらなる隠忍を強いられそうだ。

「ロシアには、石油や天然ガスの税収が潤沢な際、積み立てておく国家基金が2つあります。財政赤字の補填はここから行ってきましたが、両基金とも2019年初には底をつく、と中央銀行が発表したのです。すでに火の車の財政が、破綻する可能性さえある」(ロシア駐在記者)

 露中央銀行は、赤字の穴埋めに15年は1兆5600億ルーブル(約2兆4400億円)を基金から使ったというが、16年にはさらに3兆3400億円が必要だと予測、このペースでは早晩、使い切ってしまうのだという。

 北海道大学の木村汎名誉教授は言う。

「ロシアは08年のリーマン・ショックもこの両基金を取り崩して乗り切りました。まさに虎の子です。原油価格が1バレル=140ドルをつけるような時期に溜め込んだのですが、昨年来の急激な原油安で、吐き出さざるを得なくなっています」

 昨年末、予算原案を1バレル=50ドルで設定したのは〈楽観的すぎた〉として修正を指示、〈40ドル時代に備えよ〉と檄を飛ばしたプーチン大統領。だが17日、NY原油先物がつけた価格は28ドルだ。

「シルアノフ財相は、基金が今年中に払底する可能性にも言及しています」(同)

 経済制裁で日用品や食料品が高騰、“高インフレ”に“ルーブル安”、“原油安”の「三重苦」にあえぎながら、シリア空爆にも戦費を注ぎ込まざるを得ないロシア。

 ロシア事情に詳しい国際政治評論家は言う。

「昨年12月、OPECは原油減産を見送り、EUはロシアの制裁延長を決定、アメリカは40年ぶりの原油輸出解禁を決めました。これらはウクライナ問題等で領土拡張政策を採ったプーチン排除のため、という穿った見方もあります。天然資源に依存するロシアの“失血死”が狙いです」

 頼みは85%とも言われるプーチンの高い支持率か。

「それも、これ以上市民生活の窮乏が進めばどうなるか。18年の大統領選まで持つか、わかりません」(同)

 プーチンと国民、ロシア人同士の我慢比べだ。