「モトGP」2連覇モデルを公道向けにした“2000万円超え「手作りバイク」”〈日本の超高級品ガイド(4)〉

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 神楽坂の出版社に奉公する身の記者が、自ら見聞、トライしてご紹介する「日本の超高級ガイド」(なかには、ムダに高いと思えるものも)。これまでは「食」「健やかな生活」をテーマにおおくりしてきたが、ここで趣味やフェティシズムの分野へ目を転じよう。

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 四輪レースの最高峰にF1が位置するように、二輪には「モトGP」がある。13、14年と2連覇した車両を公道で走れる仕様にしたのがホンダの「RC213V-S」。排気量は1000cc、2190万円である。

「ベルトコンベアに流れてくるものに部品を取り付けて完成させるのが量産型。でもこのモデルは、エンジンからフレーム溶接、車両組み立てに至るまですべてが手作り。電動工具を使わず、レンチでナットを1つずつ締めています」

 こう話すのは、開発責任者の宇貫泰志さん(46)。皇宮警察車両の組み立てやレース参戦などの経験を持つ精鋭25人が作業チームに集められた。ボルトには鉄ではなくチタン。カバー類にはアルミではなくマグネシウム。モトGPマシン同様、速さを追求するための軽さである。本物が158キロで、このマシンの重量は170キロ。1000ccクラスの市販車は普通200キロを超えるから、いかに軽いかがわかる。

■“エクセレント! ファンタスティック!”

 値段にしても、レース車の総開発費は数十億円レベルと匂わせたうえで、

「正直言って安い」

 ともあれ、記者は免許を持たないので、インプレッションは、昨年9月にスペインで行なわれた国際試乗会でのエピソードに譲る。

「21人のジャーナリストからは前日の段階で、“ンなこと言ってるけど、本当かよ? グダグダうるせぇなぁ”というネガティブな反応ばかりだったんです。それが翌日の試乗後には、ヘルメットを脱いだ皆が、“エクセレント! ファンタスティック!”と」

 悪い点、改善すべきところはないかとすがっても、異口同音に「ない」。

 第1回で飲んだ「2万円」銘柄の緑茶ではないが、これがバイクなら、これまで跨(またが)ってきたものは何だったのか。それほどダイレクトな操縦フィールが世界を驚かせたのである。

「特集 ムダに高いモノもある日本の超高級ガイド」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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