「創価学会」池田会長が使い分ける“アメ”と“ムチ”〈なぜ「新興宗教」指導者の演説に惹きつけられるのか(4)〉藤倉善郎

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 「幸福の科学」の大川隆法総裁「ワールドメイト」の深見東州代表、そして「創価学会」池田大作名誉会長の話術にみる、教祖たちの手法と技術。本稿では、前回に引き続き池田会長に注目する。講演では“親しみやすさ”を演出する一方、鬼気迫る口調のスピーチを聞いたことがある公明党の国会議員は「カリスマ性を感じました。感動で鳥肌が立ったものです」と述懐する。

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 カリスマ性といえば、池田名誉会長が創価学会内部で、会員に絶対的な存在感をアピールする舞台が、定期的に行われる本部幹部会だった。学会幹部や公明党議員らが出席する、“オフ・リミッツ”の空間だ。近年、体調不良のため、彼は出席できなくなっているが、かつてはここで、“師から弟子に”、直接、活動の大方針が示されていた。この会の様子を録音したテープを入手したので、中身をお伝えしたい。シナノ企画の製作映像などでは分からない、池田名誉会長の自尊心の強さが垣間見える。例えば、07年5月24日の本部幹部会での発言はこうだ。

「『池田大作全集』は今月、101巻が出版されます。19年連続で年間ベストセラー第1位です。150巻が完成の暁には……、ガンジー全集が100巻です。(中略)世界一といわれるゲーテ全集、143巻。私はそれらを優々と超えた、世界最大の個人全集家になるでしょう」

 これに会場の聴衆からは感嘆のため息がもれる。また91年、創価学会を破門にした日蓮正宗本山、大石寺については、語気を荒げる。

「大石寺にどれだけのご供養をしたか。終戦後、大石寺は5万坪でした。(中略)戸田先生は17万坪ですよ。私は117万坪への大拡大をしております。あいつら(大石寺の僧侶)威張ってて、何も感じないけど」

「ずいぶん働いたよ。供養、供養、供養、供養で世界中に私ほど供養した人間はいないだろう。(中略)学会が総本山に供養した金額は2800億!」(いずれも08年9月3日の本部幹部会での発言)

■ギャップ

 破門騒動以来、信者を“池田教”への道に導いてきた名誉会長は、憎(に)っくき敵をこき下ろす。戦意を発揚させる苛烈な檄が飛び出すたびに幹部会員らは厳粛に受け止め、一斉に「はい」「はい」と大きな声で呼応する。

「名誉会長は一般の会員には優しく接するが、幹部の前では厳しい姿勢を見せます。こうして大石寺との力関係もはっきり示し、組織として戦いを徹底するよう指導している。同じ会員に対しても、相手や状況に応じて、巧みにアメとムチを使い分け、話法を変えているんです」(学会幹部)

 このギャップで、“親しみやすさ”の効果も一層、増すに違いない。確かにそれだけの器量がなければこれほどの大組織は運営できまい。

■共通の技は「アイコンタクト」

 様々な演説技術と手法を駆使している3人の“教祖さま”。さらに、パフォーマンスの世界を社会学的に研究し、政治家など著名人の演説にも詳しい、日本大学芸術学部の佐藤綾子教授(パフォーマンス学)は、彼らに共通する重要なスキルとして、「アイコンタクト」を挙げる。

「皆、一様に体を絶えずゆっくり回転させて、まばたきを少なめにして話をしています。身体ごと頭を一定時間、一定方向に向けることで、聴衆は“大勢の人がいるのに、自分のことを見つめてくれている”と錯覚するんです。これが『アイコンタクト』という技術。いずれの教祖も、まずはこの技術を持っており、後はそこからの“プラスアルファ”となっているのです。これができなければ、教祖にはなれません」

 もっともこれらのスキルは目新しいものではなく、昔から使われてきた話術が大半だという。彼らはそれらを巧みに組み合わせ、効果的に布教活動に利用してきたわけである。

 こうした演説のスキルを、彼らが生まれつき持ち合わせていたのか、はたまた宗教家の道を歩く過程で研究し、身に付けたのかは、判然としない。ただ間違いないのは、いずれの“教祖さま”の演説も信者のハートをガッチリ掴んでいるということだ。そこには、やはり人を巧みに惑わし、興奮させる技術や演出がちりばめられていたのである。

「特別読物 『池田大作』『大川隆法』『深見東州』 なぜ『新興宗教』指導者の演説に惹きつけられるのか――藤倉善郎(ジャーナリスト)」より

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藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
昭和49年生まれ。大学中退後、フリーライターとなり、新興宗教、特にカルト団体に注目して取材を続ける。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』。

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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