不穏な空気ただよう折から「有事に金」の買い方

企業・業界週刊新潮 2016年1月21日号掲載

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 サウジアラビアとイランの断交に始まる、中東情勢のさらなる混迷と不安。そのうえ北朝鮮の“水爆実験”と、年明け早々から世界は不穏。“有事”のニオイがプンプンするのだが、こんな時に投資の世界で言われるのが“有事に金”。金利こそ生まないものの、安定資産としての金地金の価値が、文字通り輝いてくるのである。

「実際、年初からのニューヨーク金先物相場は、それまでの下落傾向から一転して上昇しています」(経済部記者)

 やはり“有事に金”なのか、と思いがちだが、

「今の状況を単純に地政学的な“有事”と捉えないほうがいい」

 と釘を刺すのは、貴金属アナリストの亀井幸一郎氏。

「一見、中東情勢や北朝鮮問題という“有事”で金価格が上がっているように見えますが、これらはプラスアルファでしかない。むしろ“経済有事”というべき状況がベースになっているのです」

 経済有事というと、最近の世界同時株安がすぐに思い浮かぶが、

「そもそもはアメリカの利上げが絡んでいます」(同)

 昨年12月、FRB(米連邦準備制度理事会)はFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げを決定し、ゼロ金利政策からの転換を始めた。アメリカの金利が上がればドルの価値が高まり、反対に金の価格は下がるのが普通だ。

「金を扱っているファンドはそれを見越して、カラ売りで儲けようとしました。グロスで実に460トンもの金が売られ、クリスマスに向けて、金価格は1オンス1040ドル前後まで下がっていきました。彼らは1000ドルを切るラインまで下がると見ていたようです」(同)

■税抜4200円以下なら買い

 一方で、中国経済の先行きに対する不安は、依然根強い。

「利上げの持つ意味は、景気が回復しているということ。再びアメリカが世界経済をリードするという形になればいいのですが、アメリカが低迷している間に存在感を増した中国経済の失速を、アメリカの回復だけではカバーしきれないのではないか、という懸念があるのです。これが“経済有事”です」(同)

 それが表面化したのが、年明けからの世界同時株安である。

「1月8日に発表されたアメリカの雇用統計は、予想を上回るいい数字となりましたが、それでもニューヨーク株は下がり、ドルも下がった」(同)

 あわてたのは、金をカラ売りしていたファンドだ。

「金価格の下落で儲けるというアテが外れたので、今年に入って買戻しに走り、価格は1オンス1100ドルあたりまで上昇したのです」(同)

 だがこの金価格上昇、本格的なものではないという。

「これはあくまで買戻しで、金市場に新規の資金が入っているわけではない。今月末から2月にかけてまだ上がるでしょうが、買戻しが終わってしまえば、上昇は一服するのではないかと見ています」(同)

 このような状況下で、“有事に金”を買うにはどうすればいいのか。

「ポイントは、やはりアメリカの利上げです。今年3月、6月、9月、12月に0・25%ずつ利上げする予定になっていますが、果たして3月に利上げをするのかどうか。昨年12月の利上げは失敗だったから3月は見送る、となれば、そこから本格的に金価格が上がる可能性があります。逆に利上げしたとしても、“有事”への不安が消えるわけではないので、今買っておいていいと思います」(同)

 では“買い”の目安は?

「円建てで、1グラムあたり税抜4200円以下なら間違いはないでしょう」(同)

 思わぬ蹉跌となりそうなアメリカの“出口戦略”。

「長期的には、日本の“出口戦略”を睨んだ対応も必要となってきます」(同)

 今年は“有事に金”も考慮しておくべきか――。