「駅伝は2連覇どころか4連覇!」青山学院トレーナーの秘策

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 往復約220キロの距離で1位と2位の差は約7分。箱根駅伝の勝敗は選手10人の“1秒を削り出す”走りがどこまで続けられるかがカギを握る。初優勝に続いて連覇を達成した青山学院大学の強さも突き詰めればそこにある。ところが、目下、同校では「4連覇」も可能にするプロジェクトが進められているという。

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「今年の青学はとにかく戦力がズバ抜けていました。学生のトップクラスである1万メートル28分台の記録を持つ選手が11人もいて、同校だけでトップを狙えるチームを2つ作れるほどだったのです」(スポーツライターの酒井政人氏)

 連覇を達成した青山学院大学の原晋監督は「ハッピー指数300%!」とおどけてみせたが、10時間53分というタイム、すべての区間をトップ通過という記録はやはり驚きだ。

「優勝候補のチームが負ける場合、ほとんどは自滅です。プレッシャーで本来の力が発揮できない選手も多いなか、青学はエースの走りが安定していた。“新・山の神”と呼ばれる神野大地(往路5区)も怪我続きでしたが、原監督が“12月からでも間に合う”と我慢強く待った。監督と選手の信頼関係が、この結果につながったといえます」(同)

 青学の駅伝チームといえば、民間企業の営業マンから転職した原監督がほぼゼロから作り上げ、選手の自主性を重んじる指導で知られている。だが、連覇となると、それだけで達成できるものではない。

 もう一つ挙げるとすれば、早くからフィジカルトレーナーを招聘して「体幹トレーニング」を実践してきたことだ。一昨年4月に原監督に招かれ、指導しているのが、本誌(「週刊新潮」)の連載コラムでもお馴染みの中野ジェームズ修一氏である。

■「ヒラメ筋が痛い」

「大学スポーツでフィジカルトレーナーが入っているところは、まだ珍しい」

 と言う中野氏に、連覇を可能にしたトレーニング法を聞いてみる。

「青学の選手たちは50人近くいますが、最初から手取り足取り教えるわけではありません。まず、個々の筋肉ごとに、鍛える理由を自分で考えさせるのです」

 最初は、筋肉や骨、腱の部位や名前をすべて教え、あとは“腕振りを良くするためにはどこの筋肉を使うべきか”などと問い続ける。

「お蔭で選手たちは“このへんが痛い”ではなく、“ヒラメ筋が痛い”とか“腓腹筋(ひふくきん)の内側が痛い”という風に難しい筋肉名を言えるようになりました。中には私も忘れていた筋肉障害の名前まで口にする子もいて驚かされました」(同)

 神野選手も、合宿所の練習だけでは飽き足らず週2回、中野氏の事務所までやってきてトレーニングを積んでいた。だが、同氏によると青学のトレーニングプランは、まだ「4カ年計画」の半ばでしかないという。

「トレーニングはフェーズ1からフェーズ4まであり、2年目の今年はフェーズ2まで完成させました。フェーズ1は、体幹を鍛えて軸の安定性を完成させる。フェーズ2は、捻(ね)じれを入れながら走って推進力を生み出すというもの。2区を走った一色恭志君を見てもらえば分かりますが、去年よりも肩を前後に動かして捻じれを入れています」

 では、フェーズ3と4はどんなものなのかと聞くと「それは秘密」。結果として優勝できたらいいと中野氏は言うのだが、青学の駅伝関係者によると、

「来年も青学が優勝候補なのは間違いない。トレーニングがフェーズ4までうまくいけば4連覇も狙える」

 と今から鼻息を荒くするのである。

「ワイド特集 剣が峰にて一陽来復」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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