大晦日練習の観客を800倍にした「五郎丸」の価格未だに高騰中

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 茶畑に囲まれた師走のグラウンド。広大な芝生が広がる練習場の脇の、日陰が支配する観客席で、ただジッと「誰か」を見つめていると身体は芯から凍えていく。しかも時は大晦日。にも拘(かかわ)らず、静岡県磐田市のヤマハの大久保グラウンドには、対前年比「800倍」もの観客が集った。目当てはもちろん、あの選手だ。

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ラグビー日本代表の五郎丸歩選手

 2015年、知名度を最も上げた日本人のひとりが、ラグビー日本代表の五郎丸歩選手(29)であるのは論を俟(ま)つまい。その人気は留まるところを知らず、彼が所属するヤマハ発動機ジュビロは、12月31日と1月1日に練習を行っているのだが、

「去年(14年)の大晦日は、練習を観に来る人なんてほとんどいなかった。それが今年(15年)は800人も集まりました。観客動員800倍ですね。『なにわ』ナンバーの車などもあって、遠方からわざわざ大晦日練習を観に来た人もいたほどです」(ヤマハ関係者)

 この現象は、五郎丸の知名度が「800倍」に急伸した証とも言えよう。それもそのはずで、W杯から帰国して以降の彼のメディア露出は凄まじく、年末年始に限っても、12月27日に3本、同月28日、30日、31日、1月2日に各1本と計7番組にテレビ出演。元日の全国紙各紙に掲載された出版社の全面広告にも彼が起用され、同日の朝日新聞には彼の対談記事が載るなど、五郎丸は今なおあらゆるメディアを席捲している。

 この他にもW杯帰国後、ディナーショー等のイベントを約15件こなし、その間に国内リーグで7試合を戦ったのだから、ファンとしては彼が「忙殺」されていないか気になるところであろう。ラグビージャーナリストの村上晃一氏曰く、

「もともと、ラグビーの練習は1、2時間程度で集中してやることが多い。またスクラム練習を多くする必要がないフルバックの五郎丸選手は、比較的、個人で練習可能。したがって、メディア対応によって練習量が減っていることはないと思います。事実、W杯後に、彼は国内リーグ戦で3季ぶりの得点王に輝き、ヤマハもリーグ戦B組を首位突破と結果を残していますからね」

 どうやら、多忙さが五郎丸のプレーに影響を与えていることはなさそうだが、思わぬところで「影響」が出ているのだった。

■「金メダリストよりも…」

「現在、五郎丸のインタビューを載せるハードルは、極めて高くなっている。それは必ずしも、日程調整が難しいことだけが原因ではありません」

 こう吐露するのは、あるスポーツ記者だ。

「活字メディアで彼のインタビューを取ってこようとすれば、15万円から20万円の取材料が『相場』になっています。当代一の人気者ですから仕方ないのですが、サッカー日本代表の本田圭佑の全盛時に相当する額で、スポーツ選手ではトップクラスです」

 テレビ局関係者が続ける。

「テレビ業界では目下、五郎丸に報道以外の番組に出てもらうにあたっては200万円を提示するのが目安になっている。これはフィギュアの金メダリスト、羽生結弦の2倍程度です」

 冬真っ只中の寒さのなか、大晦日練習を見守った観客。彼らファンに支えられた五郎丸の懐は「暖冬」を迎えているようである。

「ワイド特集 剣が峰にて一陽来復」より

週刊新潮 2016年1月14日迎春増大号掲載

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