注意されると逆ギレ モンスター大学生はなぜ増えたのか

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「厳しく叱ってしつける」よりも「ほめていいところを伸ばす」という教育方法の方が幅をきかせている。「ほめて育てる」「叱らない子育て」といったフレーズを耳にすることも多い。テレビでお馴染みの尾木ママこと尾木直樹氏にも『尾木ママの「叱らない」子育て論』という著作があるほどだ。

 しかし、本当にそれでいいのだろうか、と疑問を呈するのは心理学博士の榎本博明氏である。榎本氏は、「ほめて育てる」という教育のせいで、自分勝手な若者やひ弱な若者が増えているのではないか、と新著『ほめると子どもはダメになる』では分析している。

 そのように考えるようになったのは、大学で学生を相手にしていて、最近特に自分勝手な自己主張をする学生が増えたと感じたことがきっかけだという。

 たとえばどんな学生か。(以下、「 」内は『ほめると子どもはダメになる』から引用)

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「授業中、あまりに態度が悪い学生がいるので『静かにするように』と注意したが、『うるさいなあ』といった感じで開き直り、だらけた態度のままなので、説教口調で注意した。それに対して反抗的な態度を取った学生は、休み時間になると教務課に駆け込み、『先生からきついことを言われて傷ついた、あんな先生の授業には出たくないから先生を替えてほしい』と訴え出た」

「授業中に寝ている学生を起こしても、またすぐに寝る。そこで、教壇を下りて注意しに行くと、こう言う。

『僕は夜中じゅうバイトしてて、ほとんど寝てないんです。寝させてください』

 ここは授業中の教室だし、寝たいのなら教室から出て行って寝なさいと言うと、『友だちと一緒にいたいんです』 と言い張り、さらには『授業料を払ってるんだから、ここにいる権利があります。他の先生はだれも注意なんかしません』と主張し、あくまでも食い下がる。こちらも譲歩するわけにはいかないので、何とか説得して出て行ってもらった」

「毎回40分以上遅刻して教室に入ってくる学生に注意すると、

『これでも頑張って起きて10時に家を出てきてるんです。家から1時間半もかかるんですよ。家が遠いんです』

 と、当然その言い分が通るだろうといった調子で自分の窮状をアピールする」

 こうした例を目の当たりにしてきた榎本氏は、

「義務を果たさなくても叱られない。いつも親がほめるべき点を探してほめてくれ、良い気分にしてもらえる。そんな子育ての結果、どのような人間がつくられていくのかということについて、ちょっと真剣に考えてみる必要があるだろう」

 と問題を提起している。

 さらに本書の中では「叱り方を間違えると子どもがトラウマを抱えるのでは」といった心配に対しても考察を進め、欧米と日本の子育ての比較も行っている。

 モンスター大学生が増え続けている現状を考えると、「ほめて育てる」式の教育の検証が必要な時期がきているのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

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